参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

議員立法Stories

「造血幹細胞移植法改正法」、
「脳卒中・循環器病対策基本法」及び「死因究明等推進基本法」の立案を振り返って

○造血幹細胞移植法改正法について

Bさん(入局12年目):造血幹細胞移植法は、白血病等の治療法である臍帯血移植に用いる臍帯血の適切な提供が確保されるようにするために非血縁間の臍帯血バンクを厚生労働大臣の許可制とするなどの内容を定めたものでしたが、血縁間で用いることを前提として規制対象としなかった臍帯血プライベートバンクから臍帯血がブローカーに流出して第三者に使用されるという問題は、平成24年の制定当時は想定されていなかったものでした。

A課長(入局24年目):悪質な業者による不適切な行為が起きることがないように、関係省庁と一緒になって、様々な場面を幾例も想定して検討を進めましたね。罰則を伴う具体的な規制法でもあるので、条文の書きぶりについても相当気を使いました。数条の条文ではありますが、数か月間にわたり何度も議論を繰り返して起案した思い出深い条文です。

○脳卒中・循環器病対策基本法について

A課長:10年以上前から、脳卒中や循環器病の対策の推進法の制定を求める患者団体や医療者の方々の声を受けて、各党・各会派の議員の先生方がとても熱意を持って取り組んできた法律だったね。この法律により医療提供体制だけでなく、発症予防や後遺症対策も含む幅広い対策が推進されることになるね。

Bさん:大勢の関係者や国会議員が集まった院内集会での皆さんの熱気には圧倒されました。成立した際には、依頼議員も関係者の方々も大変喜ばれていましたね。我々も感謝の言葉を頂き、依頼議員の思いに応えるという参議院法制局の職務を果たすことについて、改めて実感しました。

○死因究明等推進基本法について

Cさん(入局6年目):注目を集めた法医学者が主役のテレビドラマでも解剖率の低さを主人公が嘆いていましたが、以前から我が国の死因究明体制は不十分であると指摘されてきました。平成24年に制定された死因究明等推進法も平成26年に失効したままとなっていて、一方で、依然として警察取扱死体の解剖率の低さや法医学者等の人材不足が改善されていない中で、関係者から新たな基本法の制定が強く求められていました。

A課長:国会閉会中の夏に実情調査のために大学の死因究明教育センターに出張に行ってもらったね。

Dさん(出向者):実際の現場に伺って死体解剖や死亡時画像診断の現状などを教えていただきましたが、その時に伺ったことがその後法案を検討する際にとても役立ちました。

A課長:法律の制定の背景となる立法事実や問題意識は、依頼議員の認識が前提とはなるものの、立案作業を進めるには私達も背景や状況をしっかりと把握する必要があるから、今後も出張などの実情を直接知る機会を活用したいね。

○参議院法制局の職務の特徴・魅力について

A課長:成立した議員立法として成果が目に見えて形に残る仕事もあったけれど、これらの立案と並行して、水道事業の民営化、児童虐待、旧優生保護法による強制不妊手術の問題など多くの案件に携わりましたね。

Bさん:当局の立案業務においては、提出法律案という公に見える形にならない案件も少なくないですよね。

Dさん:その中には社会的に関心の高い案件もあったと思います。表には出ませんが、微力ながら社会への貢献をできたと実感することもできました。

A課長:議員立法というと、脳卒中・循環器病対策基本法や死因究明等推進基本法のような、いわゆる「基本法」や「推進法」が多いイメージがあるけれども、造血幹細胞移植法改正法のように特に専門技術的な事柄に関する規律を内容とするものもある。様々な分野の様々な種類の法律の立案に携われるのは参議院法制局の魅力だと思うな。

Cさん:立案のために法学とは関係のない分野の勉強から始めることが多いことも面白さの一つですよね。今回も「循環器病」とは何か?というように一から勉強しました。当局を志望する人には、日頃から、世の中の色々なことに興味を持って、新しいことを学ぶ好奇心を持っていてほしいですね。

Bさん:成立後の法律の執行を円滑にする観点から、各府省との調整をする場面も少なくないです。この3本の法律の立案の際にも様々なやり取りをしました。これまでの議員立法の立案の経験ももちろんですが、消費者庁に出向していた際に政府提出法案の立案などの経験をして政府側の動きを理解していたことも、このような調整の場面で生きたと思います。

A課長:出向などで職務に生かせる経験をしっかり積めるのも魅力だね。どのようなキャリアパスを描きたいか、積極的に意見を出していってほしいね。

Cさん:当局の組織全体としてフラットな雰囲気なので、若手であっても、日頃の立案業務だけでなく様々な点について積極的に意見を言える職場なのがいいですね。

Bさん:出向で来られているDさんは、当局の仕事についてどう感じましたか?

Dさん:法律案を一から議員と一緒に作り上げていき、法制面や理論面について責任を持って対応していく点や、成果が法律案という形で結実する点が特徴的だと思います。

A課長:依頼議員と協議を重ね、依頼議員が真に実現したいことを追求し、それを「法律」という姿にするために法制局内で若手職員も一緒になって徹底的に議論して条文を考えていくことはとても大変だけれども、最後に「法律案」を完成させたときに得られる満足感は、当局の仕事の一番の醍醐味だと思う。一人でも多くの方に当局の職務に興味を持ってもらって、志望してもらえると嬉しいね。