Aさん(入局16年目):二人はそれぞれ成立した法案を担当したわけですが、どのようなことが印象に残っていますか。
Bさん(入局12年目):今回の立案は、令和元年7月の商業捕鯨再開を受けて依頼されたものでした。商業捕鯨再開の方針は前年の平成30年末には日本政府が決定しており、また、改正の対象となった法律も平成29年に参議院の議員立法として成立したものであったこともあり、今回も当局に依頼されることがある程度予想されていました。全く予期していなかった依頼が急にきてバタバタの状況の中で立案することも多々あるのですが、今回の案件は、依頼がくる前から課内で「改正するならこの規定のこの部分だろうか」などと議論していたため、比較的落ち着いて対応できたのではないかなと思います。日頃から所管事項について情報収集し、準備、勉強しておくことの大切さを改めて強く認識するきっかけにもなりました。
Aさん:確かに日頃からの勉強が大事ですね。世の中で話題となった問題は、議員の関心も高いので、備えておく必要がありますよね。また、法制局では2年程度で異動があるので、特に新しい分野の担当となった直後は、関係する文献を読み漁ったり、情報を収集したり、勉強が欠かせません。その一方で、法制局人生を通じて、幅広く様々な分野の法律に携わることができるので、興味関心が尽きないですよね。読書バリアフリー法については、どうでしょうか。
Cさん(入局11年目):この法律は、障害者の方々や関係団体の方々が、かねてから制定を求めていたものであり、その声を受けて、各党・各会派の議員の方々が熱心に取り組まれたものです。どのような施策のニーズがあるのかを把握・理解し、それを的確に条文に反映させていく必要があるため、関係者の方々からのヒアリングなどで出された意見を踏まえ、依頼議員と協議を重ねながら、具体的な条文を書いていくという、丁寧な作業が必要でした。また、実際に障害者の方々向けの録音図書や再生機器を見に行ったり、現場の方々の話を聴いたりしたことが、条文の具体的な文言を検討する際に、役に立ちました。
Aさん:法律が成立すれば、条文そのものに基づいて社会が動くことになるので、依頼を正確に把握し、十分に検討を行い、的確に条文という形に表現していくというのは法制局の基本ですよね。
法案の成立に向けては関係者との調整や審議対応も大変だったと思うのですが、いかがでしたか。
Bさん:他の案件と同様、関係議員への説明や各会派の部会での法案の内容の説明など、必要な作業はこなしましたが、これほどスムーズに成立までこぎ着けた例は珍しいのではないかと感じました。関係省庁との調整についても、それほど難航することなく進めていけたという印象です。
捕鯨の問題については、熱心な議員の先生が多く、会派の壁を超えて協力して成立に向けて引っ張っていかれたことによるものだと思います。そのような案件のお手伝いをすることができたことは、大変光栄だったと思います。
Cさん:私は関係省庁との調整を担当しましたが、この案件を担当する直前に、行政庁に出向しており、政府側の動きなどを幾分か理解していたので、こういった調整の際に役立つこともありました。また、各政党の手続で説明をしたり、関係議員への説明に行ったりと、とにかく関係各所を走り回ったというのが印象的でした。さらに、委員会での質疑に向けて、法制面・論理面から問題のないよう意識して、想定問答・答弁原稿の作成も行いました。ただ、委員会で議員立法の審議を行うかどうか、当日ギリギリまで議員間で調整が行われていたため、内心ドキドキしていました。無事成立に至ることができてよかったです。
Aさん:法制局では、基本的な検討から条文化、さらには関係者への説明など議員立法にかかわる様々な仕事を課長を含めて3~4人の課で行わなければなりません。皆さん課内の様子はどのような感じでしたか。
Bさん:各人が調査結果を持ち寄り、様々な意見を出し合って知恵を絞り、徹底的に議論することを心がけています。若手も含め積極的に意見が交わされ、議論が闊達に行えていたのではないかと思います。
Cさん:私も、補佐級になってからは特に、他愛ない話から法律の細かい話まで、いつでも話がしやすい環境づくりというものも意識するようになりました。一つの課で同時に複数の案件を抱えることが普通ですし、チームワークが欠かせないですね。
Aさん:当局には様々な依頼がありますが、成立する法案ばかりに意味があるわけではありません。私は新型コロナウイルス感染症に関連する支援施策の手続を迅速化するための法案の立案に携わりましたが、社会で問題となっている事柄に対して議員が世の中に訴えるためのツールとしての法案、そのような法案の補佐をするのも、当局特有の仕事であり、やりがいを感じる部分です。
それでは、最後に、それぞれの法案を担当した感想を。
Bさん:今回の法案は、最初から最後まで、つまり依頼を受けてから法案が成立するまで全て携わることができました。出向中に閣法の立案経験はあったのですが、やはり議員が政策を実現する、その一部始終に当局の職員として携われたというのは感慨深いものがありました。そういう意味でも、貴重な、そして思い出深い経験になりました。
Cさん:最初にお話ししたように、丁寧な作業を経て、最終的に法律が成立した際、依頼議員はもちろん、関係者の方々の喜びの声を聞いたときは、微力ながら貢献できたのかなと感じることができました。議員の想いを形にすべく、法制面から議員をサポートし、法律案を一から議員と一緒に作り上げていくことができるのは、当局ならではの仕事であることを、改めて実感しました。