参議院法制局

祝日でない記念日・週間・月間

 法律では、「国民の祝日」以外にも特定の日を"○○の日"という記念日として定めたり、特定の週・月について"○○週間""○○月間"と定めていることがあります(「国民の祝日」については、「国民の祝日」 参照)。

 祝日でない記念日は、「国民の祝日」のように「国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日」として法律上休日となるものではありませんが、国や自治体が行う施策への国民の関心・理解を深めるなどの趣旨で設けられるもので、この日には、様々な形で、記念行事や広報活動が行われます。週間・月間も、同様の趣旨で設けられるものです。いくつかの具体例を、その由来とともに御紹介したいと思います。

 「環境の日」(6月5日)は、1972(昭和47)年6月5日からストックホルムで開催された国連人間環境会議を記念し、日本の提案を受けて国連で定められたことに由来し、平成5年に制定された環境基本法で規定されています。

 「古典の日」(11月1日)は、我が国を代表する古典である『源氏物語』について、その存在を確認できる最も古い日付が寛弘5(1008)年11月1日である(『紫式部日記』)ことに由来し、平成24年に制定された古典の日に関する法律で規定されました。

 「障害者週間」(12月3日~9日)は、平成7年に政府の障害者施策推進本部により、国連の「国際障害者デー」である12月3日から、我が国の「障害者の日」である12月9日までの1週間を、「障害者週間」とすると決定されたことに由来し、平成16年改正後の障害者基本法で規定されたものです。なお、同年の改正前の障害者基本法では、12月9日を「障害者の日」と規定していました。

 「ギャンブル等依存症問題啓発週間」(5月14日~20日)は、平成30年に制定されたギャンブル等依存症対策基本法で規定されました。これは、新年度に新社会人や大学生となった層に対してギャンブル等依存症問題の関心と理解を深める機会を作ることがギャンブル等依存症の予防等に有効であることなどを考慮したものと説明されています。

 「自殺対策強化月間」(3月)は、平成28年改正の自殺対策基本法で規定されました。これは、従来から、自殺者数の最も多い傾向が見られる3月を「自殺対策強化月間」として、様々な悩みを抱えた人が必要な支援を受けられるよう、施策が重点的に実施されてきたことを踏まえ、法律に明記されたものです。

 「食品ロス削減月間」(10月)は、令和元年に制定された食品ロスの削減の推進に関する法律で規定されました。これは、食品ロスの発生量が多いといわれる宴会シーズンである年末に向けて、国民の意識を醸成して社会的な機運を高めておくことが食品ロスの効果的な削減に有効と考えられたことなどによるようです。

 御存じのものはありましたでしょうか。上記はほんの一例で、他にもたくさんありますから、気になる方は、由来とともに調べてみてはいかがでしょうか。

 ちなみに、これらの記念日や週間・月間を定める法律は、議員立法によるものであることが多いようです。また、いわゆる基本法の中で規定されることも多いようです。基本法は、議員立法になじむといわれているため(「基本法」参照)、このような傾向が見られるのかもしれません。

 もっとも、記念日の一例として紹介した「環境の日」を定める環境基本法のように閣法で制定されたものもありますし、「動物愛護週間」を定める動物の愛護及び管理に関する法律のように、いわゆる実施法に規定されているものもあります。

 また、最近では、これらを重ねて規定する例も増えてきています。例えば、自殺対策基本法では「自殺予防週間」(9月10日~16日)と「自殺対策強化月間」(3月)を、食品ロスの削減の推進に関する法律では「食品ロス削減の日」(10月30日)と「食品ロス削減月間」(10月)を、それぞれ重ねて規定しています。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。