参議院法制局

議員立法Stories

「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の立案を振り返って 

検討の始まり~超党派議連~

職員A(課長補佐級):令和4年の通常国会において、私たちが携わった、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立しました。全ての障害者の方々が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得・利用・円滑な意思疎通ができることが重要ということで、そのための施策を推進するものです。この法律は、障害当事者の方々が制定を強く望んでおられたものでしたね。

職員B(係員級):法律案の策定過程において、超党派の議員連盟で多くの障害者関係団体から直接意見を聴く機会があったのが印象的でした。そこでの意見を踏まえながら、依頼議員や関係省庁と一緒に条文化作業を進めていったわけですが、障害当事者の方々から生の声やニーズを聴くことで、自分自身では感じにくい情報アクセシビリティやコミュニケーション上の不自由さを知ることができ、それを条文に反映することができたと思います。条文案を諮った議連の総会で障害者の方々から素晴らしい法律案を作ってくれたと感激していただいたのは、印象に残っています。

職員A:この法律の施策の一つに、障害者の方々の情報アクセシビリティ・コミュニケーションに資するICT機器・サービスの開発提供への助成などがありますが、Bさんには、実際にどのようなものがあるか見に行ってもらったりもしましたよね。

職員B:はい。視覚障害者や聴覚障害者の方々が情報を取得するのを補助する機器のワークショップに参加し、機器の開発者の方々から説明を聴いたり、障害当事者の方々に混じって実際に機器を使ってみたりして、非常に参考になりました。

若手の頃から様々な仕事を~関係省庁との調整~

職員A:Bさんは今年で入局3年目でしたよね。課長からの指示によるものはもちろん、指示がなくても自発的にいろんな作業をしてもらって大変助かっていました。

                    

職員B:依頼議員に説明するための資料の作成から、協議の日程調整・同行、法律案の骨子案のたたき台の作成、関係省庁や障害者関係団体からの意見・質問に対する回答の作成、各党の党内手続の日程・進捗の把握・管理に至るまで、実に様々な仕事をさせてもらいました。

職員A:確かBさんは、成立法律案の立案に関わったのは初めてでしたよね。

職員B:そうなんです。それもあって分からないことだらけでしたが、一つの法律案が成立するまでの過程には、非常に多くの人が関わっているということを知りました。

                    

職員A:ここは特に大変だったなぁと思ったことはありましたか?

                    

職員B:関係する省庁が多く、各省庁からの意見や照会に対応するのが大変でした。関係省庁との調整は、通常、課長補佐級職員が行うことが多いと思いますが、複数の省庁と同時並行でやり取りをしなければならないこともしばしばあったため、係員級の私が対応することもありました。

                    

職員A:そうでしたね。この法律は、あらゆる分野における情報アクセシビリティ・コミュニケーションの向上を目指すものだったので、調整先が多かったですよね。この法律は、政府の施策を法律によって後押しし、更なる予算の充実を図ることを目指す、いわゆるプログラム法ということもあって、実際に各省庁がどのような施策を行っているのか一覧 表にして洗い出したり、その中でも当事者の方々が更なる後押しを必要としている施策がどういったものなのか整理したりもしましたよね。

条文化~法体系の整理・文言のチョイス~

職員A:Bさんには、実際に法律案の骨子案のたたき台を作ってもらったり、条文を書く作業をやってもらったりもしましたね。当局の、特に課内での仕事の進め方としては、部下から先輩、そして上司に順番に上げていくというよりも、まずは皆で意見を持ち寄って議論をするということが多いと思うんですが、Bさんにも検討結果や意見を積極的に言ってもらって、課としても充実した議論ができたんじゃないかなと思います。条文化に当たって何か印象的なことはありましたか?

職員B:今回の法律はプログラム法で、いわゆる実施法ではなかったので、目に見える形での他の法律への"ハネ"はありませんでしたが、それでもやはり、様々ある障害者関係の現行法体系との整合性や関係性の整理が必要であることを実感しました。

職員A:新たに法律案を作ることとなった場合、現行法では足りない理由・新法制定の必要性について整理するところから始めますよね。特に障害者の方々に関係する法律は現行でも数多くあるので、今回の法律の位置付けを整理する必要がありました。Bさんにはその辺りの検討をしてもらったりしましたね。

職員B:あと、同じ分野の基本法である障害者基本法にある文言をこの法律でも使っているのですが、そもそも障害者基本法でその文言が使われた経緯や理由を知るために政府答弁や逐条解説を調べたりして、障害者基本法との関係でその文言を使わなければならない理由を整理したりしたことも個人的には印象に残っています。

達成感・やりがい

職員B:依頼者である議員や当事者である障害者の方々の声・想いを直接聴いて、それを法律という形に反映させるサポートができるというのが、当局の魅力だと思いました。実際に法律案が成立したときの達成感ややりがいはひとしおでしたし、依頼議員や障害者関係団体の方々から感謝の言葉を頂いたときは、この仕事をしていて良かったなと思った瞬間でした。

職員A:議院法制局の職員は、議員の立法活動を補佐するというのが仕事ですが、実際に仕事をしてみて、依頼者である議員との距離の近さを実感しますよね。その距離感で、依頼者である議員の想いを敏感にくみ取り、サポートし、法律という形あるものを作り上げていく。一人でも多くの方に、そういった当局の仕事に興味を持ってもらって、志望してもらえるとうれしいですね。