参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

空港の設置・管理に関する法律

 今や旅行や仕事で飛行機を利用することが当たり前の時代になりました。昭和50年には2,545万人だった国内航空旅客の数は、平成29年にはその約4倍の1億人を突破しました。また、国際航空旅客は昭和50年には827万人でしたが、平成29年には約11倍の9,555万人となりました。このほか、最近では、空港の施設も充実しており、レジャーや買い物で空港を訪れる方もいるかもしれません。

 このように私たちにとって身近な存在になった空港は、空港法(昭和31年法律第80号)第2条で「公共の用に供する飛行場」と定義されていることによるまでもなく、公共施設の代表格とも言える存在でしょう。現在、国内空港の数は97ありますが、空港は誰がどのように管理しているのでしょうか。

 一般には、空港の管理については、空港法で定められています。空港法では空港の法令上の種別が定められ、その種別によって、その役割や、設置・管理の主体、設置・管理に要する費用負担のルールなどが規定されています。

 国際航空輸送網又は国内航空輸送網の拠点となる空港(いわゆる「拠点空港」)(空港法第4条)は、全国で28あります。拠点空港は、国が設置・管理する東京国際(羽田)、新千歳、那覇など19空港(国管理空港)、国が設置し、地方公共団体が管理する旭川、山口宇部など5空港(特定地方管理空港)、国とは別の組織が設置・管理する成田国際、中部国際、関西国際、大阪国際(伊丹)の4空港(いわゆる「会社管理空港」)に分類されます。

 なお、会社管理空港は、利用者数が極めて多い空港ですが、このうち、成田国際空港(設置当初は新東京国際空港)、関西国際空港及び中部国際空港は、航空需要の急増に対応するためにその整備が大規模かつ緊急を要する事業であることから、新東京国際空港公団法(昭和40年法律第115号)、関西国際空港株式会社法(昭和59年法律第53号)、中部国際空港の設置及び管理に関する法律(平成10年法律第36号)などの特別の法律が制定され、設置されたものです。また、大阪国際(伊丹)空港は、元々は国管理空港でしたが、平成24年から、関西国際空港と一体的に管理すべく、会社管理空港となりました。

 拠点空港以外の空港であって、国際航空輸送網又は国内航空輸送網を形成する上で重要な役割を果たす空港(空港法第5条)は、青森、松本、神戸など、全国に54あり、これらは地方公共団体が設置・管理します(地方管理空港)。利尻、八丈島、種子島、宮古など、離島にある空港も多くはこの地方管理空港に分類されます。

 これらのほか、地域住民の移動手段を確保するための「コミューター空港」の役割を果たす空港等が調布、名古屋など7空港、自衛隊等と滑走路を共用する空港(共用空港)(空港法附則第2条)が百里、小松、岩国など8空港あります。

 空港を取り巻く環境は、近年大きく変化してきています。人口減少・少子高齢化の進展により、かつてのようには航空需要の大きな増加が見込まれない中で、効率的な空港運営が求められています。他方、近年増加する訪日外国人旅行者(インバウンド)に対応した多様な空港サービスの提供が求められるようにもなっています。

 このような状況も踏まえ、空港の「民営化」が進められてきています。「民営化」といってもその意味は必ずしも一義的ではありませんが、中部国際空港(平成17年開港)は、国が指定した株式会社がその設置・管理を行うこととすることで、民間の活力を活用して空港の設置・管理を行う比較的先駆的な取組の例といえるでしょう。このほか、最近では、国等が施設の所有権を留保したまま、民間の主体にその運営権を設定するとともに、航空系事業(滑走路の管理等)と非航空系事業(ターミナルビルの管理等)を一体的に運営する「コンセッション方式」と呼ばれる方式で行われていることが増えています。

 関西国際空港及び大阪国際(伊丹)空港については、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」(平成23年法律第54号)により、平成28年4月に、コンセッション方式による民営化がなされています。その後、平成25年に制定された「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(平成25年法律第67号)により、空港全般についてコンセッション方式の採用が可能になりました。これにより、国管理空港については仙台空港(平成28年7月)、福岡空港(平成31年4月)、熊本空港(令和2年4月)などで、地方管理空港については神戸空港(平成30年4月)、南紀白浜空港(平成31年4月)などで、順次民営化が行われてきました。

 このように空港の「民営化」は着実に進んでいる状況ですが、このところの予想外の新型コロナウイルス感染症の影響により、今後大幅な航空需要の低減が見込まれます。今後の空港の管理の在り方がどうなっていくのか、注目されます。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。