参議院法制局

一部改正法の題名について

  法律には、新しい法律を作る新規制定法のほか、既存の法律を改める改正法があります。改正法は、既存の法律の全部を改めるか、一部を改めるかにより、更に全部改正法と一部改正法に分かれます。今回は一部改正法の題名についてのお話です。

 一部改正法は、その本則においていくつの法律を改正するかによって、題名の付け方に一定のルールがあります。改正の対象となる法律(以下「改正対象法律」という。)が一つ(A法)の場合、当該一部改正法の題名は「A法の一部を改正する法律」となります。改正対象法律が二つ(A法及びB法)の場合、当該一部改正法の題名は「A法及びB法の一部を改正する法律」となります。

 では、三つ以上の法律(A法、B法、・・・〔略〕・・・及びX法)を改正する場合はどうでしょうか。この場合、改正対象法律として最初に登場するA法が全ての改正対象法律をいわば代表する形で「A法等の一部を改正する法律」という題名になり、B法からX法までは題名に登場しないことになります。しかしながら、それぞれの法律の改正を当該一部改正法の本則の中でどのような順番で並べるかの明確なルールはありません。

 そうなると、三つ以上の法律を改正する場合、題名を付けるに当たり、どの法律を「A法」として扱うことが適当かを考える必要があります。

 一般に、一部改正法に限らず、法律の題名は、内容をできるだけ正確に、かつ簡潔に表す必要があるとされています。このことからすると、当該一部改正法において行われる法律改正のうち最も重要な改正が行われると考えられるものをA法とし、「A法等の一部を改正する法律」とすることが筋のようにも思われます。

 ただし、どの法律の改正が最も重要であるかというのは、個人の主観によるところもありますし、重要度の高低を一概に判断できないこともあります。そのため、重要度という点に着目せず、改正対象法律を法律番号順(=法律の公布順)に並べることとし、最も古い法律をA法とする、という考えもあるようです。

 実際に成立した一部改正法を見てみても、改正の重要度順に並べていると思われるものもあれば、(重要度順に並べた結果偶然そのようになった可能性もありますが、)法律番号順に並べているものも存在します。

 どちらか一方の考えに固執することなく、重要度の優劣を判断することができる場合には重要度順とし、できない場合には法律番号順とするという考えもあるかもしれません。

 いずれにしても、「○○法等の一部を改正する法律」という題名の場合には、「等」の中に複数の法律が隠れているため、どのような法律が隠れているのか、そしてそれらがどのように改正されることになるのかをしっかり確認することが大切であると考えられます。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2022年11月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。