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トイレに関する文言

 皆さんが普段使っている職場のトイレについて、令和3年に労働衛生関係の規則の改正があり、男性用と女性用に区別して設置しなければならない原則の例外として、少人数の職場においては「独立個室型の便所」(男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所。例えば、職場がマンションの一室である場合のトイレなど)の設置で足りるとされました。この例のように、トイレについて法令でいろいろな定めが置かれていることをご存じない方も多いかと思います。そこで今回は、身近なのにあまり知られていないトイレに関する法令上の文言を二つ紹介したいと思います。

 一つ目は、先ほど出てきた「便房」です。法令においては、「トイレ」ではなく「便所」という文言が使用されていますが、「便所」とは別に「便房」という文言も使用されています。「便房」とは、広辞苑では「休息の室」という意味ですが、政省令では「男性用の小便器以外の便器のある場所をいい、1人分の区画の範囲」(厚生労働省資料より)という意味で使用されています。「便所」がその周辺設備も含めた用を足す一連の場所という意味とされているので、両者の概念を整理すると、複数の「便房」とその周辺設備によって「便所」が構成されるケース(商業施設などの大規模なトイレ)もあれば、一つの「便房」のみによって「便所」が構成されるケース(先ほどの「独立個室型の便所」)もあるということになります。

 二つ目は「座便式」です。いわゆる洋式トイレの「洋式」のことです。法律では「洋式便所」といった文言は使用されず、洋式トイレを意味する文言として「座便式の水洗便所」という文言が外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律第7条において使用されています。同条は、公共交通事業者等による「外国人観光旅客利便増進措置」を定めるもので、その措置の例示として「座便式の水洗便所の設置」が挙げられています(平成30年の改正で規定)。確かに、座って便をするのが洋式トイレなので「座便式」なのですが、なかなか聞かない文言ですよね。実はこの「座便式」という文言、調べてみると相当古い文言でした。昭和24年制定当時の国際観光ホテル整備法において、国際観光ホテルの登録を受ける際の基準の一つとして「便所は水洗式であり、且つ、座便式のもの」があることと規定されていました(現在の同法には出てきません)。外国人観光旅客を呼び込むために洋式トイレが必要なのは、今も昔も変わらないようです。

 ちなみに、和式トイレの「和式」ですが、規則では「和式便器」という文言が出てきますが、法律では、筆者が調べた限り、「和式」や和式に相当する文言はありませんでした。法律において和式トイレに限定して何か規定を設ける必要がないということかもしれませんね。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2022年7月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。