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自動車をとめる場所について





 自動車を運転する人にとって、それをどこにとめるかは大きな関心事ではないでしょうか。今回は、自動車をとめる場所に関わる主な法律について見ていきたいと思います。



 まず、自動車を保有する場合、自動車の保管場所の確保等に関する法律により、道路上の場所以外の場所において、車庫など自動車を通常保管する場所を確保しなければならないとされています(第3条)。マイカーを購入する際に、いわゆる車庫証明が必要とされるのも、この法律が根拠となっています(第4条)。



 次に紹介する駐車場法は、都市における駐車場の整備について定める法律です。この法律では、①道路の路面に一定の区画を限って地方公共団体が設置する「路上駐車場」(第2条第1号)、②道路の路面外に設置される「路外駐車場」(第2条第2号)、③条例により、一定の地区内で、一定規模以上のマンションや百貨店など駐車需要を生じさせる程度の大きい建築物を新築・増築する場合に、その敷地内等に設置が義務付けられる「附置義務駐車施設」(第20 条)、という3つの類型が定められています。街中でよく目にするコインパーキングは②に当たり、都市計画区域内で一定規模以上のものは届出が必要です(第12 条)。国土交通省の統計によると、この届出をしている路外駐車場と附置義務駐車施設の供用台数は多い一方、区画線という簡単な構造で設けられる路上駐車場は、路外駐車場では満たされない駐車需要に対応する暫定的なものとされ、供用台数も少ない傾向にあります。



 道路上に駐車する施設といえば、パーキング・メーターやパーキング・チケットを思い浮かべる方もいるかもしれません。こちらは、道路交通法に基づき、都道府県公安委員会が設置するものです(第49 条)。制限時間を守らないと、罰金が科せられますので、御注意ください(第119 条の3第1項第1号・第2号)。



 道路に関する中心的な法律である道路法にも、駐車場に関する規定があります。道路上に、又は道路に接して道路管理者が設ける自動車駐車場が、道路の附属物として位置付けられ(第2条第2項第6号)、道路無料公開の原則の例外として料金の徴収も認められています(第24 条の2)。駐車場法の路上駐車場と似ているように思えますが、設置管理者が異なるほか、道路法の自動車駐車場は、工作物によってしっかりと車道と分離され、恒久的に残すことができる性格を有するといわれています。



 この道路法の自動車駐車場に該当する意外な施設が、東京で高速バスを利用される方にはおなじみのバスタ新宿です。大規模なバスターミナルの多くは、自動車ターミナル法の「バスターミナル」となっていますが、バスタ新宿は、国道20 号の道路事業により、道路の附属物である一般交通の用に供する自動車駐車場として整備されました。バスやタクシー専用のターミナルという法的位置付けではないため、一般車両の進入が法律上排除されておらず、道路管理者からの要請に基づき進入を控えてもらっているのが現状です。なお、令和2年の道路法の改正により、バス、タクシー等事業者専用の停留施設である特定車両停留施設が導入され、今後は、この制度を活用したバスターミナルの整備が見込まれます。



 このように、普段何げなく自動車をとめている場所についても、これだけ多くの法律が定められています。皆さんの身の回りの物事についても法律をひもといてみると、意外な発見が待っているかもしれません。



  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。