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「年度」について





 皆さんは、「年度」という言葉を聞いたとき、いつからいつまでのことを思い浮かべるでしょうか。人生を振り返ってみれば、ランドセルを背負って初めて小学校に登校した4月、スーツを着て初めて出社した4月、"新年度は4月から始まる"と感じる方も多いでしょう。「○○年度」といえば、当然、「4月1日から翌年3月31 日まで」の期間を指すのでしょうか。法令上は、どのように用いられているのでしょうか。



 法令上、「年度」の代表的な例として、「会計年度」と「事業年度」があります。



 「会計年度」とは、主に、国や地方公共団体の収入・支出を時間的に区分して、その収支の状況を明確にするために設けられた期間をいいます。具体的な期間は、国の場合は財政法第11 条に、地方公共団体の場合は地方自治法第208 条に、「国〔普通地方公共団体〕の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31 日に終〔わ〕る」と法定されています。



 「事業年度」とは、国や地方公共団体以外の事業を行う法人等について、事業の経理の状況等を明らかにするために設けられた期間をいいます。独立行政法人については、「毎年4月1日に始まり、翌年3月31 日に終わる」と法定され(独立行政法人通則法第36 条)、特殊法人等についても、期間が法定されているものは「毎年4月1日に始まり、翌年3月31 日に終わる」とされている例が多いですが、「毎年1月1日から12 月31 日まで」と法定されている例もあります(日本中央競馬会法第22 条)。民間企業については、各企業の定款等で定められ、原則として法定されませんが、保険会社や銀行など、法律で特に定められているものもあります(保険業法第109 条、銀行法第17 条等)。



 このように、法令上の「年度」は、一定の期日から一定の期日までの期間のことを意味し、それぞれの制度の目的に照らして、法令が特に設定している期間のことをいいます。



 なお、いわゆる「学校年度」については、法令上は「年度」という用語は用いられておらず、小学校であれば、学校教育法施行規則第59 条に、「小学校の学年は、4月1日に始まり、翌年3月31 日に終わる」と定められています。余談ではありますが、いわゆる"9 月入学"を導入する場合には、この施行規則を改正する必要があります。



 最後に、他の例もご紹介しておきます。あまりなじみがないかと思いますが、「砂糖年度」という言葉です。一見、その業界での通称かと思いきや、実は法律上用いられており、「毎年10 月1日から翌年9月30 日までの期間」と定義されています(砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律第2条第9項)。通常、"令和元砂糖年度"といった形で使用されます。



 日常生活において何げなく使っている言葉でも、それをきっかけに改めて法令集を眺めてみると、思い掛けない発見や新たな言葉との出会いがあり、面白いものです。



  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。