法制執務コラム

法律の実効性喪失

 通常、法律においては、その終期を定めず、一旦施行されれば、何らかの立法措置を講じない限り、その効力は継続します。しかし、必要により、その法律中にあらかじめその終期を定めることがあります。こうした法律は「限時法」と呼ばれており、例えば、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27 年法律第64 号)附則第2条第1項には、「この法律は、平成三十八年三月三十一日限り、その効力を失う。」と定められています。限時法においては、その定められた終期が到来すれば、その法律を廃止する等の立法措置を講ずることなく、自動的にその効力を失うことになります。

 このように、法律は、廃止又は失効規定による失効により、その効力を失いますが、一方で、廃止等の措置が講ぜられていないものの、想定される適用対象が存在しなくなったこと等により、その実効性を喪失したと考えられる場合があります。このような実効性を喪失した法律は、現行の法律ではないと整理されています(参議院議員江口克彦君提出「我が国の法律の整備改廃に関する質問に対する答弁書」(内閣参質186 第41 号))。 
 
 それでは、どのような場合に「実効性を喪失した」といえるのでしょうか。総務省が運営するe-Gov 法令検索によれば、「法務省大臣官房司法法制部が行う法令の編纂において、廃止等の手続はとられていないが、1.日時の経過、2.関係事務の終了、3.規律対象の消滅等により、適用される余地がなくなった、若しくは合理的に判断して適用されることがほとんどないと認められるに至った法令」を「実効性喪失法令」としています。しかしながら、必ずしも基準が明確であるとはいえず、実効性を喪失したかどうかの判断が難しい場合があります。

 例えば、皇太子徳仁親王の結婚の儀の行われる日を休日とする法律(平成5年法律第32号)は、皇太子徳仁親王の結婚の儀の行われる日(平成5年6月9日)を休日とする旨を定めた法律ですが、その終期については定めていません。この点、平成5年6月9日を過ぎれば、この法律は実効性を喪失したとも考えられますが、他方、仮にこの日を支払期日とした場合、休日に当たることから時効の起算日がその翌日となる場合もあり(民法第142条)、時効期間が問題となる限り実効性を喪失していないとも考えられます。なお、本稿を執筆した令和元年11 月11 日において、この法律はe-Gov 法令検索には登載されていませんが、発行されている法令集の中には登載されているものもあり、必ずしも一致した取扱いにはなっていないようです。天皇陛下の即位礼正殿の儀が令和元年10 月22 日に行われ、天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律(平成30 年法律第99号)の規定により、その日は休日となりましたが、この法律が今後どのように取り扱われることになるのか気になるところです。 

 (信谷彰/「立法と調査」NO.418・2019年12月)


※ 本記事は、参議院法制局職員が「立法と調査」(参議院事務局企画調整室編集・発行)のために執筆したものを転載したものです。記事の内容は、執筆当時のものであり、その時期については、記事最下部に記載している発行号数・年月をご覧ください。また、本記事の無断転載を禁じます。

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