参議院法制局

インターネットの定義

 近年の情報通信技術・情報処理技術やそれらを用いた産業の急速な発展に伴い、法律でこれらに関する規定を設けることが多くなっています。平成28年制定の官民データ活用推進基本法では、「人工知能関連技術」、「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」や「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」という用語が用いられ、それぞれの定義が規定されています。

 このような新しい用語や外来語を法令に用いる場合には、社会通念上、その用語を法令においてそのまま用いても特に紛れがないと考えられるときは、その用語を定義する必要はないと考えられています。これについては、「世上で一般に使って、通常の義務教育を終わった程度の人が聞いてもその意味の大体はわかる」かどうかを基準にするとの政府答弁もあります(昭和39年3月4日衆議院科学技術振興対策特別委員会)。先ほど挙げた用語については、その程度にまでは社会一般に浸透していないと判断されたということだと思います。

 新しい用語とは反対に、情報通信技術・情報処理技術の中でも日常に取り込まれて久しいインターネットは、法律でどのように定義されているのでしょうか。

 法律に初めて「インターネット」という用語が登場したのは、平成12年制定の高度情報通信ネットワーク社会形成基本法のようです。この法律では「インターネット」が「高度情報通信ネットワーク」の例示として用いられているのですが、「インターネット」が何を意味するかは定義されていません。平成12年の世帯のインターネットの利用率が約3割であった(総務省平成12年通信利用動向調査)ので、インターネットが社会一般に浸透し理解されていたかどうか判断が難しかったのではないでしょうか。

 その後、多くの法律で「インターネット」という言葉が用いられていますが、定義しているものはないようです。なお、広辞苑(第7版)では、インターネットとは「世界規模のコンピューター・ネットワーク。複数のネットワークを相互接続するもので、これに繋がるすべてのホスト・コンピューターは固有のIPアドレスで識別され、ネットワーク間を中継する仕組みによって全世界での通信が可能」と説明されていますが、これを法律の中で表現するのはなかなか難しそうです。

 ちなみに、情報通信技術・情報処理技術に関連して、平成7年に執筆された「法律における外来語」〔『立法と調査』第190号〕では、「コンピューター」は、まだ法律で用いられていないと紹介されていました。その後、「コンピュータ」を用いる例はごくわずかにあるものの、当時も現在もコンピューターを指す用語としては「電子計算機」が用いられています。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。