参議院法制局

六法

 法学部の授業では基本六法が主要科目とされ、また、書店では「○○六法」という名前の様々な書籍が売られています。この「六法」という言葉は、皆さんもたびたび耳にされることがあると思います。

 しかし、そもそも、なぜ「六法」というのでしょうか。

 「六法」とは、辞書(広辞苑〔第六版〕)を見ると、①憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の6つの法律、②ある分野に関する法令集、を指すものとされています。また、③幅広い分野の主要な法令を収録した書籍である「六法全書」の略称として、法令集一般を指すものとして用いられることもあります。

 ①に挙げた法律は「基本六法」とも呼ばれ、我が国における主要な法律とされてきました。これは、明治の初めに箕作麟祥みつくりりんしょう博士が「仏蘭西法律書」に憲法とナポレオン制定の民法・(民事)訴訟法・商法・治罪法(今の刑事訴訟法)・刑法の5法典を収録し、これらを「六法」と総称したのに始まるというのが一般的な理解のようです(有斐閣六法編集室編「有斐閣六法の使い方・読み方」(2014年)1ページ参照)。法律の主要な一分野である行政法は当時まだ生成途上であったため含まれなかったとも言われており、今日では、これら6つだけを主要な法律と捉えるのはいささか狭すぎるかもしれませんね。

 ②の意味での「六法」を「専門六法」と呼ぶこともありますが、筆者が今担当している国土交通の分野だけでも、過去に出版されていたものも含めると「国土交通六法」のほか「建設六法」「河川六法」「水道六法」「道路六法」「運輸六法」「鉄道六法」「自動車六法」など実に多様な「六法」が出版されています。この「六法」には法律や政省令にとどまらず告示や通達まで盛り込まれているものも多く、実務では欠かせないものとなっています。

 ③の「六法」は、収録法令数や表記、罰則の規定や委任を受けて設けられた規定といった参照条文などの注記に工夫が凝らされた多くのものが出版されており、中には直近の法改正が分かるようになっている便利なものもあります。条文ごとに関連する判例が盛り込まれたものや各種資格試験に必要な法令をコンパクトにまとめたものも人気です。最近では2色刷のものや横書きのものも見かけるようになりました。今や各種法令検索システムが充実し、パソコンを使えばいつでもお目当ての法律にアクセスできる御時世ですが、それでもやはり紙媒体の「六法」は一覧性がある点で有用であり、手放せません。

 私たち法制局職員はこういった「六法」を片手に「六法」を始めとする多くの法律と向き合いながら、携わった法律が「六法」に掲載される日を夢見て(?)、日々職務に励んでいます。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。