いわゆる「改革法」について
法律の中には、「改革基本法」や「改革推進法」といった題名が付されたものがあります。 平成13年の中央省庁再編につながった「中央省庁等改革基本法」、ロースクールや裁判員制度の創設等につながった「司法制度改革推進法」等は、御存じの方も多いはずです。平成24年には「社会保障制度改革推進法」が成立し、注目を集めました。今回は、これらの法律がどのような性質のもので、どのような意義を持つと考えられているのか、 見てみることにしましょう。
これらの法律は、それ自体で制度改革の実施に必要な関連法の改正をしたり、具体的な措置を講じたりするものではなく、制度改革の理念や講ずべき措置の基本的な方針を明らかにし、それに沿って制度改革が実施されなければならない旨を規定する、いわば"改革のプログラム"とでも言うべき法律です。このような型の法律をどのような名称で総称するかは必ずしも定まっていませんが、ここでは「改革法」と呼ぶことにします。
実際に制度改革を実施するためには、「改革法」とは別に、具体的な関連法の改正等を行う法律を制定したり、財政上の措置を講じたりすることが必要となります。「改革法」の中には、関連法の改正等を行う法案とセットで国会に提出されたものもありましたが、多くは、関連法の改正等を行う法案に先行して、単独で提出されたものです。それらの「改革法」では、政府に対し、その中で示している制度改革の大枠に沿って、必要な法案の提出、財政上の措置等を行うことを義務付けることが多く、具体的に講ずべき措置に関する計画の策定を義務付ける場合もあります。加えて、制度改革の実施期限、すなわち、制度改革がいつまでに実施されなければならないかを定めている例も見受けられます。
さらに、通常は、制度改革として具体的に講ずべき措置の内容の検討等を担う機関の設置も定められています。例えば、「中央省庁等改革基本法」では、新体制への移行の推進に関する総合調整、関係法律案の立案等を担う「中央省庁等改革推進本部」の設置が定められました。
"先行して"提出される「改革法」は、こうした仕組みを通じて、対象とする制度改革が複雑な制度設計、詳細な調査検討等を要するものである中、まずは、制度改革の大枠を示しつつ、その実施を強く推進しようとするものであるといえます。
先ほど挙げた「中央省庁等改革基本法」と「司法制度改革推進法」のように、成立した「改革法」のほとんどは内閣提出の法律案でしたが、「改革法」の形式を採った法律案が議員立法として提出されるケースも増えてきているように感じます。
- ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。