常用漢字表と法令における漢字使用
法令における漢字使用については、平成23年に大きな変化がありました。漢字使用の目安である「常用漢字表」が平成22年11月30日に改定され、公用文の漢字使用等のルールも新しくなったことに伴い、内閣法制局が新しい「法令における漢字使用等について」を定めて、平成23年からはこの新しい基準に沿って法令が作られているのです。この常用漢字表の改定は情報化時代に対応するために行われたもので、「鬱」といった手書きで書くのが難しい漢字も常用漢字とするなどの変更がありました。
では、法令における漢字使用については、具体的にどのような変化があったのでしょうか。一番分かりやすいのは、新しく常用漢字に加えられた漢字が法令で用いられる場合です。例えば、「禁錮」は、従来は「禁
その一方で、引き続き仮名で表記することとされたものもあります。例えば、「他」という漢字には、従来からある「た」という字音に加えて、新たに「ほか」という字訓が加えられたのですが、法令では「△△に定めるもののほか」というように従来どおり仮名で表記することとされています。
このほか、少し専門的な話になりますが、昭和29年に内閣法制局が定めた「法令用語改正要領」というものにも漢字使用の基準等が定められていましたが、実情に合わないものもあり、廃止されて平成22年の「法令における漢字使用等について」の中に取り込まれました(例えば、「監護」は「監督保護」に改めるべきとされていましたが、最近の法令でも「監護」が使われており、「監督保護」に改めるべきとの基準はなくなりました。)。
なお、法令における漢字使用の基準が新しくなっても、今ある全ての法律の表記が突然変わってしまうというわけではありません。新しい法律はもちろん全体が新しい基準に従っていますが、既存の法律の一部を改正する場合には、改正に関係する部分だけが新しい基準に従うことになります。そのため、同じ法律の中に古い表記と新しい表記が混在するということが生じます。例えば、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)において、「○○にかんがみ」という表現について、第3条第1項では「かんがみ」と表記されていますが、同条第2項では「鑑み」と表記されており、同じ条の中でも混在が生じています。
実際に法律を起案している際に表記の扱いが変わった漢字を使うときがあると、法令における用語も時代によって変化するものであるということを実感します。
- ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。