法律の"延命"
法律には、それ自身にその有効期限についての規定を置いているものがあり(限時法)、その法律は、ある一時的な状態に対応する性格を持つものとして制定されたと考えられます。「一時的」というと、通常は、近い将来その法律の"寿命"が来るイメージがありますが、必ずしもそういうものばかりというわけではないようです。例えば、昭和28年に制定された離島振興法の附則第2項では、「この法律は、昭和38年3月31日限りその効力を失う。」と規定されていました。しかし、その後、この日付の部分は数回改正され、直近の改正では「平成35年3月31日」とされました。また、数回の改正によって目的規定(第1条)も改正されており、"寿命"が延びるとともに法律の性格も徐々に変わってきています。
非常に多くの"延命"を繰り返した例として、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法(昭和27年制定)があります。上記の離島振興法は10年ごとでしたが、こちらは5年ごとの改正により"寿命"が延びてきました。過去の改正では目的規定の実質的な改正が一度も行われず、平成29年には、この有効期限を更に5年延長する旨の改正がなされました。これにより、この法律は、「臨時措置法」でありながら、実に13回もの"延命"を経て存続することとなったのです。
なお、「臨時措置法」「暫定措置法」と題された法律は、「臨時」や「暫定」の一般的な言葉の意味付けから考えると、限時法であるのが当然のように思われがちですが、昭和20年代・30年代に制定され、有効期限が具体的に定められていないため、現在でも有効なものは相当数あります。罰金等臨時措置法(昭和23年制定)や農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年制定)などは、実に70年以上も「臨時」「暫定」の措置が講じられていることになります。これらの法律は、廃止等の措置をとらない限り、これからも効力を持ち続けることになります。
最後に、今日では失効していますが、"延命"を予定していた法律として、いわゆるテロ対策特別措置法やイラク支援特別措置法も挙げておきたいと思います。これらの法律には、有効期限についての規定とは別に、必要があればその効力を延長することができる旨の規定も置かれており、珍しい例であったといえます。
- ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。