参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

お金の話

 平成16年11月に現行の1万円札、5千円札及び千円札の発行が開始されてから15年近く経過した平成31年4月、偽造抵抗力を強化する等の観点から、令和6年度上期を目途に新しいデザインのお札を発行することが発表されました。

 この発表を受けて、新しいデザインのお札の発行を楽しみにしている方もいれば、古いデザインのお札がいつまで使えるのか気になった方もいるかもしれません。

 一般に「お札」と呼ばれているものは、正式には日本銀行券(日本銀行法(平成9年法律第89号。以下「新日本銀行法」という。)第46条第1項の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう。)といい、貨幣(一般に「硬貨」と呼ばれているもの)及び日本銀行券が通貨として認められています(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号。以下「通貨法」という。)第2条第3項)。また、昭和17年に日本銀行法が制定される以前に日本銀行が発行した兌換銀行券や平成9年に全部改正される前の日本銀行法(昭和17年法律第67号。以下「旧日本銀行法」という。)に基づいて発行された銀行券についても日本銀行の発行した銀行券とみなすこととされています(旧日本銀行法附則第63条及び新日本銀行法附則第16条)。

 よって、過去に日本銀行から発行された銀行券は、1円未満の銀行券など法令により通用を禁止されたものを除き、今後も通貨として使用し続けることができることになります(現在通貨として使用できる日本銀行券については、日本銀行のホームページをご参照下さい。)。ちなみに、現在使用できる一番古い銀行券は、明治18年に発行された1円札(旧壱圓券)ですが、実際の支払の際にこの1円札を使用しても、お店の人が戸惑ってしまうかもしれません。

 次は、貨幣の話です。

 貨幣は、政府がその製造及び発行の権能を有し、独立行政法人造幣局がその製造を行っています(通貨法第4条)。

 貨幣には、我々が普段手にする通常のものと国家的な記念事業として閣議の決定を経て発行される貨幣(いわゆる「記念貨幣」)があり、記念貨幣も額面価格で使用することができます。また、法の施行前に臨時通貨法(昭和13年法律第86号)に基づき発行された臨時補助貨幣(小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律(昭和28年法律第60号)により通用を禁止された臨時補助貨幣を除く。)や特別法に基づき発行された臨時補助貨幣についても、貨幣とみなされることとなっています(通貨法附則第8条)。現在、通貨として使用できるものの素材、品位、量目及び形式については、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令(昭和63年政令第50号)別表第1及び別表第2に定められていますので、ご参照下さい(5百円貨幣は、令和3年頃に素材などが変更される予定になっています。)。

 なお、日本銀行券は、法貨として無制限に通用する(新日本銀行法第46条第2項)のに対し、貨幣は、額面価格の20倍までを限り、法貨として通用する(通貨法第7条)こととされていますので、お店の人は、たとえ会計に時間がかかっても、同一種類の貨幣20枚までによる支払の受取を拒むことはできません。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。