参議院議員の通常選挙の期日
参議院議員は、任期は6年で、3年ごとにその半数が改選されます。そして、参議院は、衆議院のように解散されることがありませんから、参議院議員の選挙(通常選挙)は3年ごとに、必ず行われることになります。
以上のことは、御存じの方がほとんどかと思います。では、参議院議員の通常選挙が何月何日に行われるかは、どのように決まるのでしょうか。
公職選挙法32条1項は、参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終わる日の前30日以内に行うとしています。この規定は、議会の欠缺を防ぎ、国政の運営に支障を来さないよう任期満了前に行うこととする一方で、議員の任期中あまり早い時期に行うことを避ける趣旨といわれています。これに対して、同条2項では、同条1項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から23日以内にかかる場合には、通常選挙は、参議院閉会の日から24日以後30日以内に行うとしています。この規定は、国会開会中に選挙の公示や執行がなされることで、現職の議員は、議員としての職責を果たすためには選挙運動ができず、選挙運動に専念すれば議員としての職責が果たせなくなるという不都合な事態を避ける趣旨といわれています。
それでは、直近2回の通常選挙を例に、公職選挙法がどのように適用されて期日が定まっているかを見てみましょう。
まず令和元年については、議員の任期満了日が7月28日でした。32条1項を適用した場合、通常選挙は、6月28日から7月27日までの間に行われることになりますが、国会会期の終了日は6月26日でしたので、6月28日から7月27日までの期間が閉会の日から23日以内にかかり、同条2項が適用されました。公職選挙法の「○○の日から」というのは、初日を算入しないと解されているため、通常選挙は、閉会の日の翌日である6月27日から起算して24日以後30日以内、すなわち、7月20日から26日までの間に行うことになります。国政選挙の期日は日曜日に設けることが定着しており、令和元年の通常選挙は、7月21日に行われました。
次に、平成28年については、議員の任期満了日が7月25日でしたので、32条1項による選挙を行うべき期間は6月25日から7月24日までとなります。国会会期の終了日は6月1日でしたので、6月25日から7月24日までの期間は閉会の日から23日以内にかからず(6月24日までが23日以内となります。)、同条2項は適用されないことになります。その結果、平成28年の通常選挙は、7月10日に通常選挙が行われました。
近年は、通常国会(会期は国会法の規定により150日)の召集は1月下旬となる場合が多いこともあり、32条2項が適用されるケースが圧倒的に多く、1項により選挙期日が定まる平成28年のようなケースは珍しいといえるでしょう。
ところで、通常選挙の期日は、いつ公示されるのでしょうか。公職選挙法32条3項は、通常選挙の期日は、少なくとも17日前に公示しなければならないとしています。「少なくとも」とあるので、18日以上前に公示することも可能で、かつては、最低限の期間に1日余裕を持たせて公示されていた時期もありましたが、最近では最低限の期間のみを空けて公示されるという扱いが定着しています。実際、令和元年についてみると、公示日は、投票日(7月21日)の17日前の7月4日でした。
なお、平成28年については、公示日は、投票日(7月10日)の18日前の6月22日でした。これは、17日前である6月23日が、太平洋戦争末期の沖縄戦戦没者を追悼する「慰霊の日」であることに配慮したものとされています。
- ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。