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法令における用語の定義

 雑誌や新聞の記事を読んでいると、規制等の根拠として法令の条項が注記されていることがままあります。その記事で取り上げられている事項に関心があれば、実際に六法を開き、注記された条項に直接当たってみることもあるでしょう。多くの場合、注記された条項の条文だけを読んだとしても、そのおよその意味を理解することは十分可能です。しかし、ある用語の意味がよくわからないために、その条項全体の意味もよくわからなくなるということもたまにあります。このような場合、その用語の意味を理解するためにはどうしたらよいのでしょうか。

 こうした場合、その法令においてその用語の定義が行われていないかを確認してみることが重要です。法令において使用される用語のうち社会通念からすればその意義に広狭があり、あるいは色々に解釈される余地があるようなものについては、法令を分かりやすくし、また解釈上の疑義を少なくするために、法令自体においてその用語の定義が行われ、その特定の意義、用法について明らかにするということがなされるからです。

 では、法令においてその用語の定義が行われていないかを確認するには、法令のどこを探せばよいのでしょうか。この点についての説明をする前に、法令における用語の定義の方法について、確認しておきましょう。

 法令における用語の定義の方法としては、大きく分けて、用語の定義のための規定を特に設ける方法と法令の規定中で括弧を用いて定義を行う方法とがあります。どちらの方法を採るかにつき明確な基準があるわけではありませんが、法令の内容が複雑であり、かつ、その法令においてその用語が重要な意義を有するような場合、あるいは、その用語の用いられる度数が比較的多いような場合には、定義のための規定を特に設けるという方法が採られ、その他の場合には、括弧を用いて定義を行うという方法が採られるのが通例です。例えば、割賦販売法では第2条第1項で「割賦販売」について定義のための規定を特に設けており、また、同法第35条の3の41第1項では「信用情報」について、同法第38条第1項では「信用情報機関」について、それぞれ括弧を用いて定義を行う方法が採られています。この例を見ても、今述べた使い分けのルールについて十分確認することができるでしょう。

 では、法令において用語の定義が行われた場合、その定義は法令のどの範囲にまで及ぶのでしょうか。多くの例に見られるように、特に定義のための規定が法令の総則的部分に設けられた場合には、用語の定義は、その法令全体に及ぶこととなります。一方、括弧を用いて定義を行う方法が採られた場合、用語の定義は、基本的に定義を行った位置以後の同一の用語にしか及ぶことはありません。

 したがって、用語の定義の有無について確認したい場合には、その法令においてその語が用いられている部分よりも前の部分を探すというのが基本となるわけです。

 ただし、用語の定義が法令の後の部分で行われることも、例外的にあります。例えば、租税特別措置法第5条の2では、第7項で同条第1項で用いられている「特定振替機関」等についての定義を行っています。このような例は国税関係の法律では決して珍しいものではありません。同じ条の中で定義のための規定を設けているのですから見落とすようなことはないと思いますが、注意が必要です。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。