参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

法律の構成

法男 「今の参議院議員の定数って248人だったよね。」
律子 「ええっ、245人よ。」
法男 「議員定数の規定は、確か公職選挙法の総則に...ほら!4条には、248人と書いてある。基本的なことでも、ちゃんと法律を確かめないといけないよ。」
律子 「どこかに245人と書いた条文があるはずなのに...」
 条文を探すにもどこにあるのか分からないことが、よくあります。

 法律の構成や条文の順番には、おおよその基準があり、条文を探すとき、これを知っていると便利です。

 法律は、大きく本則と附則に分かれ、本則にはその法律の本体的内容が、附則には本則に付随する事項が定められます。

 本則の冒頭には、法律の全体にかかわる基本的事項や法制度の前提となる事項を定める総則的規定が置かれます。法律の目的や趣旨を定める規定に始まり、定義規定、制度運用の基本原則を定める規定が続きます。総則的規定の次には、法制度の中核ともいえる実体的規定が置かれ、その後は雑則的規定、罰則規定と続きます。雑則的規定としては、技術的事項・手続的事項など、法制度全般に関しながらも基本的事項とまではいえない細かな事項が定められます。

 附則に定められる「本則に付随する事項」の代表例は、施行期日ですが、他にも、例えば、法律の制定・改廃による急変を緩和するための経過措置、必要な他の法律の改正といった事項があります。

 こうした基準は、明文で定められたものではなく、長年の立法の蓄積によりできたものです。したがって、まだ蓄積のなかった古い時代の法律には当てはまらないことがあります。例えば、健康保険法(大正15年制定)には、平成14年改正前は雑則の章がなく、技術的・手続的事項も総則の章に定められていました。同じく医療保険制度を定める国民健康保険法(昭和33年制定)とは法律の構成が異なっていたのです。

 しかし、平成14年の健康保険法の改正により、これまで述べた基準に従い、法律を組立て直すこととして、例えば、時効の規定を総則の4条から雑則の193条に大きく移しました。こうした整理により、少しは条文が探しやすくなったかもしれません。

 探している条文の場所に目星をつけたならば、あとは、条文の見出しを見るなどして、目的の条文を探します。なお、法令集によっては、編者が関係する条文を「参照条文」として注記しているものがあり、条文探しの手掛かりとすることができます。

 さて、冒頭の話に戻りますが、選挙制度の前提ともいえる事項である参議院議員の定数は、法男君の言うとおり、公職選挙法の総則の4条で定められ、平成30年の6人の定数増を受けて、248人となっています。ところが、半数改選の参議院では、この定数増は二度の通常選挙で3人ずつに分けて行われ、これを裏付けるべく、平成30年の定数増に関する公職選挙法改正法の附則3条には平成34年(=令和4年)7月25日までは245人とする特例が設けられました。したがって、正解は律子さん。過渡期にある事項については、その法律の附則や改正法の附則などにこうした規定があることも多く、条文探しも非常に面倒になります。

 「だから、法律って分かりにくいんだよ!」と法男君が怒っても、無理もないかもしれませんね。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。