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地域振興法

  地域振興法とは、特定の地域の公共事業等について優遇措置を講ずることにより、その地域を発展させようとする法律です。なぜこのような法律が必要なのでしょう。

 地域振興法の立法目的は、一般的には「国土の均衡ある発展」とされていますが、より具体的にその内容を見てみると、二つの類型があると言われています。

 第1の類型は、所与の制約条件があるために自力でうまく発展が図れないような地域を対象に、国が地域格差の是正を図る観点から支援をする法律で、しばしばハンディキャップ法とも呼ばれます。所与の制約条件のうちには、自然的条件も社会的条件もあります。前者に当たるものとしては、離島振興法、豪雪地帯対策特別措置法、山村振興法、半島振興法等があり、後者としては、国土復帰という特殊事情を有する奄美群島や小笠原諸島についての振興開発特別措置法があります。

 地域格差が是正されれば法律は不要となるはずなので、通常は時限立法として制定されます。もっとも、法律の失効時期が到来しても、格差がまだ是正されていないという判断がなされ、その失効時期が延長されることがほとんどです。中には、旧過疎地域活性化特別措置法が平成12年に失効して新たにその内容をほぼ受け継ぐ過疎地域自立促進特別措置法が制定されたように、衣替えした新法の形で存続していく例もあります。この類型の多くが議員立法であるのは、地元への利益誘導を図る色彩の強いものだからとも言えるでしょう。

 第2の類型は、産業政策的観点を有する法律です。産業の過度な集中を防止したり、特定の産業の発展を促進するために、その目的に適した地域を指定し、そこでの産業の振興を図るものです。総合保養地域整備法、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律等があります。

 さらに、少数ですが、これらのいずれにも属するとはいいがたい、「国土の均衡ある発展」とは別の目的を持つ第3類型があります。ダム建設によって水没する地域の住民の生活の安定を図ることによりダム建設を促進しようとする水源地域対策特別措置法や事故等で逆風の強い原発の維持・推進を図る原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法が例として挙げられます。

 地域振興法に共通な規定は、地域の指定と振興計画の策定です。これらは、地元自治体の関与を経つつ、所管大臣が担うことになります。国土交通大臣の所管となるほか、振興策の内容等に応じて総務大臣、農林水産大臣等と共管とされる場合もあります。水源地域対策特別措置法の場合も、ダム建設を目的とするため、国土交通大臣所管とされています。これに対し、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法では、原子力発電の維持を国家の重要政策と位置付ける観点から内閣総理大臣所管としている点が特徴的です。

 振興計画を法律上位置付けることの意味は、これに基づく事業を他の地域よりも優先して行うべきことが明確になることです。また、第1類型の法律の一部及び第3類型の例として挙げた二つの法律では、振興計画に基づく事業の一部について、国の補助率が嵩上げされています。そのほか、地域振興の観点から行う地方債の発行や地方税の不均一課税に関し、地方交付税の算定について特別扱いをする旨の規定を置く法律も、類型を問わず多く見られるところです。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。