整備法と整理法
令和元年に成立した法律の中には、「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」や「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」といったいわゆる「整備法」と呼ばれるものがありました。
これらの法律は、量的にも非常に大部であり、上記の2つの法律では、それぞれ、100近く、200近くの法律の改正が行われています。
これらの法律がこれほどまでに大部となった理由としては、立法により実現しようとする内容が他の多くの法律にも波及するため、既存の数多くの法律の改正が必要となるからです。
このように、新たな法律の施行等に伴って関係法律の改正が行われる場合であって、実質的な政策判断に基づいた改正も併せて行われるようなときには、「...(法の施行に伴う)関係法律の整備に関する法律」といった題名が付されることが多く、最近では、先述した法律のほかに、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」や「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」がこのようないわゆる「整備法」として成立しています。
ところで、この「整備法」に似たものとして「整理法」と呼ばれるものがあります。これは、法律の制定改廃に伴って関係法律中の不要となった規定を削ったり、字句を改める等、必然的に行われる改正を内容とするものであり、通常「...(法の施行に伴う)関係法律の整理に関する法律」といった題名が付されます。「国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」(昭和58年法律第78号)などはこの例です(なお、必然的に行われる改正という域を少しはみ出すような改正を伴う場合には、このように「整理等に関する法律」という題名とされることがあります。)。
以上のように、整理法と整備法とは、もととなる法律の改正に伴い、必然的な字句の整理等にとどまるものか、それとも、実質的な政策判断にまで踏み込んだものかによって区別されます。
通常は、もととなる法律の改正等に関連して他の法律の改正が行われる場合、整備法や整理法として独立させることなく、その法律の改正と併せて、一本の法律として提出されますが、関係法律の改廃が多数にのぼるときには、このように整備法なり整理法として独立させることが行われます。
なお、このほかに、附則で規定するような内容について、量が非常に多い場合には、「...施行法」として独立させることがあり、「介護保険法施行法」などがこの例です。
現在、我が国には2,000本以上もの法律があり、新しい法律を作る際には、これらの既存の法律への影響を考えなければなりません。
- ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。