参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

公布後施行前の法律の改廃

 法律は、国会で議決されて成立すると、公布され、施行期日から施行されます。このことは、既にこのコーナーで紹介されているところです。

 ところで、ある法律が施行されるまでの間に種々の事情が生じ、その法律をそのまま施行すると不都合が生ずる場合があります。

 「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」という題名の法律の例を紹介します。この法律は、不正競争防止法等改正法(平成30年法律第33号。平成30年5月30日公布。)附則第29条によって改正されることとなっていました。

 しかし、後から提出・公布されたこの法律の改正法(平成30年法律第94号。平成30年12月14日公布。)により、不正競争防止法等改正法附則第29条の施行よりも先にこの法律の題名が「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に改められることとなりました。

 このままでは、不正競争防止法等改正法附則第29条の施行の時点において、同条が引用する題名と改正後の題名が合致しないという不都合が生じます。

 そこで、平成30年法律第94号では、不正競争防止法等改正法附則第29条で引用しているこの法律の題名を「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」と改正する規定(附則第30条第2号)が盛り込まれていました。

 また、施行前の段階で内容までも変更する改正が行われたことがあります。

 一方、未施行の時点で内容を全く変更する改正が行われたことがあります。

 このような例として、いわゆる政治改革関連法があります。衆議院議員の選挙をいわゆる中選挙区から小選挙区比例代表並立制に改める公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号)は、平成6年2月4日に公布されましたが、参議院で否決された後両院協議会で成案がまとまる際に、成立した国会の会期が終了ぎりぎりであることもあり、小選挙区300、比例区200とするなど各種の手直しは、次の国会で行うこととし、施行できない状態でとりあえず成立したものなので、公布された段階では、小選挙区274、比例区226とされるなどの内容とされていました。これについては、平成6年3月11日に公布された「公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(ちなみに、これは誤植ではありません。公職選挙法を改正する法律をさらに改正するので、このような題名となるのです。)により改正されることで各種の手直しが行われました。

 また、未施行のまま廃止されてしまうこともあります。この例としては、海上公安局法があります。同法は、施行期日を「別に法律で定める日」としていましたが、施行期日が定まらないまま、防衛庁設置法により、同法の施行の際廃止されました。

 これらの例で分かるように、法律は、成立し、公布されても、施行前に改正されることがあるのです。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。