参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

見直し条項

  法律には、その附則において、「見直し条項」とか、「検討条項」というように呼ばれる条項が置かれることがあります。これは「政府は、~について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」といった形で規定され、その法律の制定時に積み残した課題やあるいは将来の状況の変化に対し、立法措置も含め適切な対応をとることを確保するために設けられる規定です。

 余談になりますが、このような性格から見直し条項は、与野党が対立する法案に妥協の産物として設けられる場合もあり、政府提出法案に対する国会での修正で設けられる場合もあります。例えば、民事訴訟法の全面改正時における公務員の職務上の秘密に関する文書の提出命令についての見直し条項(民事訴訟法(平成8年法律第109号)附則第27条第1項。衆議院において修正により加えられた。)があります。

 このように見直し条項が設けられるのは積み残しの課題があるとか、将来の状況の変化が予想されるというような場合に多いのですが、平成9年頃から、政府提出法案にこれらとは若干違った経緯から設けられた見直し条項も見受けられるようになりました。例えば、環境影響評価法(平成9年法律第81号)の附則においては「政府は、この法律の施行後10年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」(環境影響評価法附則第7条)といった規定が置かれています。

 この規定が置かれている趣旨については、環境影響評価法について政府として検討課題を積み残しているとか施行の状況に応じて対処することをあえて規定する必要があるような問題点があると考えているわけではなく、行政改革の検討の過程で規制については、一定期間でその必要性について見直しを行うこと(いわゆるサンセット条項)の必要性が言われていることによる規定であると説明されています。

 このような対応の政府内部での根拠には、閣議決定である「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」があります。その中において「規制の新設に当たっては、原則として当該規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すこととする。法律により新たな制度を創設して規制の新設を行うものについては、各府省は、その趣旨・目的等に照らして適当としないものを除き、当該法律に一定期間経過後当該規制の見直しを行う旨の条項(以下「見直し条項」という。)を盛り込むものとする。」としています。

 従来は、いったん規制がされると社会経済の変化にかかわらず規制が一人歩きして永続化してしまうと批判がされてきたところであり、このような弊害を防止するためには一律に新規の規制について、見直し条項を設けるというアプローチが必要になってきたということでしょう。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。