参議院法制局

参議院が発足してから50年間の参議院議員立法

  旧憲法は、「帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス」と規定しており、参議院は、戦後公布された新憲法が「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」としたことで誕生することになります。そして、昭和22年4月20日に参議院議員選挙法による第1回通常選挙が行われています。こうして、参議院が発足してから50年の間、参議院議員発議でどんな法律が制定されてきたのか見てみることにしましょう。

 新憲法施行後独立回復(昭和27年4月28日、平和条約が発効)までの国会の草創期における参議院議員立法の特徴として緑風会の活動があります。緑風会所属の参議院議員によって発議され成立した法律としては、文化財保護法や年齢のとなえ方に関する法律等があります。緑風会の活動は良識の府たる参議院にふさわしいものとして参議院改革を考える際によく引き合いに出されます。それは、こうした独特の立法活動にも着目されてのことだと思われます。

 国会草創期の他の代表的な参議院議員立法としては、第2回国会の人身保護法や優生保護法(現在は、母体保護法)、第7回国会の精神衛生法(現在は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)、第10回国会の覚せい剤取締法などがあげられるでしょう。厚生・福祉の分野では、このような重要な法律が参議院の議員立法により制定されています。

 なお、第10回国会には、参議院議員発議で土地収用法、国有林野法(現在は、国有林野の管理経営に関する法律)、証券投資信託法(現在は、投資信託及び投資法人に関する法律)といった法律が成立していますが、これらはいわゆる政府依頼立法(政府が立法を希望する事項を与党に対して議員発議とするように依頼したもの。形式だけを議員発議としたにすぎないもので実質的な意味での議員立法ではないという見方が強く、実例も第10回国会から第13回国会に集中している)といわれるものです。

 独立回復後は、日本全体が占領体制からの転換を目指す中で、そのための多くの法律が制定されていますが、参議院議員立法でも、労働金庫法や町村合併促進法などが成立しています。

 昭和30年に、保守合同及び社会党の統一が実現し、いわゆる55年体制ができあがるわけですが、以後、議員発議法案の成立率が激減します。議員発議法案のほとんどが野党からの依頼になったことによるものです。昭和30年暮れの第23回国会から平成4年暮れの第125回国会までの37年間で成立した参議院議員発議の法律は、48本です。

 その後5年間はこの状況に変化が見られます。実際、第126回から第136回国会までで11本の参議院議員発議の法律が成立しています。その中には、民間海外援助事業の推進のための物品の譲与に関する法律、農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律、高齢社会対策基本法などがあります。特に、高齢社会対策基本法は、参議院の調査会からの提案によるもので、参議院議員発議法案の今後のひとつのあり方を示すものとして注目されました。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。