参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

見落とせない附則

  法律の規定は「本則」と「附則」から構成され、本則には、法令の本体的部分となる実質的な定めが置かれるのに対して、附則には、本則に定められた事項に付随して必要となる事項が定められることとなっています。このように聞くと、附則に規定される事項はあまり重要ではないようにも思われてしまうかもしれませんが、附則にも本則に劣らないほど重要な事項が定められることが多々あります。今回は、法律の附則に規定される事項について見ていきましょう。

 附則に規定される事項は法律の内容によって異なりますが、まず最初に置かれるのが施行期日に関する定めです。施行とは、その法律が実際に効力を発揮することを言い、施行期日は、法律の効力発生時期を明確にするために定められるものです。

 また、法律の改正が行われると、新制度への移行を円滑に行うための経過的な措置や、新旧法令の適用関係を明確にするための定め等が必要となりますが、これらの事項も附則における重要な規定事項です。例えば、罰則の規定が改正されれば、改正前の行為に対する罰則の適用をどうするかについての規定が必要となってきますし、税率が変われば、いつの時点の取引から新税率を適用すべきかなどについて定めを置くことが必要となってきます。

 さらに、附則には、本則の特例が定められている場合もあります。例えば、現在の参議院議員の定数について、公職選挙法の本則で定められている議員定数は248人ですが、実際は245人です。これは、公職選挙法の一部を改正する法律(平成30年法律第75号)の附則の規定により、平成34年(=令和4年)7月25日までの間、245人とするとされていることによるものです。

 このほか、附則に検討条項(見直し規定)が置かれることがあります。検討条項とは、法律の施行後一定の時期において、法律の施行の状況や社会情勢の変化等をみて検討を加えた上で、所要の措置を講ずることを政府等に義務付ける規定です。先ほど紹介した公職選挙法の一部を改正する法律(平成30年法律第75号)も、公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号)の附則において、「平成三十一年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と規定されていたことを受けた法律改正でした(検討結果の是非についてはいろいろと議論のあるところですが。)。

 このように見てくると、附則には、経過措置など当事者にとって重大な影響を及ぼす事項が規定されていたり、特例など本則だけを見ていたのでは分からないような事項が規定されていたりします。複雑な規定も多く、また、付随的事項ということで見過ごしてしまいそうですが、いずれも、本則の円滑な運用のためには不可欠な規定であり、見落としてはならない法律の重要な構成部分と言えましょう。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。