法制執務コラム

選挙権年齢

 平成28年に選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられたのは記憶に新しいところです。ところで、いつ18歳の誕生日を迎える者が、投票を行うことができるのでしょうか。

 「年齢計算ニ関スル法律」では、年齢を計算するときには出生日を初日に算入することが定められています。したがって、例えば平成12年11月2日生まれの者は、平成30年11月1日限り(同日の24時)をもって満18歳になります(当コラム「うるう年をめぐる法令」『立法と調査』No.278(20.2.29)参照)。では、仮に同日(18歳の誕生日の前日)が選挙期日とした場合、投票を行うことはできるでしょうか(選挙人名簿には登録されているとします。)。

 これに関し、選挙実務上、選挙期日の翌日に18歳の誕生日を迎える人までが選挙権を有することになるとされています。その背後にある考え方について、選挙権年齢がまだ満20歳以上であった時代のものですが、昭和54年11月22日に言い渡された大阪高等裁判所の選挙権年齢に関する判決が参考になります。同判決においては、「被選挙権に関する公職選挙法10条2項において、年令は選挙の「期日」により算定すると規定されており、この被選挙権に関する規定は選挙権についても類推適用されると解すべきであり(中略)満20年に達する(中略)出生応当日の前日の午後12時を含む同日午前0時以降の全部が右選挙権取得の日に当るものと解することができる。」とされています(上告は後日棄却)。

 では、選挙期日の翌日に18歳の誕生日を迎える者は、職務等のため選挙の期日に投票を行えない場合、期日前投票を行うことができるでしょうか。期日前投票を行う日を基準にすれば18歳未満ですが、選挙の期日を基準にすれば満18歳ということになります。この点、公職選挙法では、期日前投票については「選挙の当日」ではなく「投票の当日」選挙権を有することが要件とされています(第43条括弧書)。したがって、投票の当日は18歳未満であるため、残念ながら期日前投票を行うことはできないということになります。

 では、不在者投票についてはどうでしょうか。公職選挙法では、不在者投票については原則どおり「選挙の当日」に選挙権を有することが要件とされており、投票用紙を提出する時点では18歳未満であっても、不在者投票を行うことはできるということになります。

 なぜ期日前投票のみが投票の当日を基準とするのでしょうか。期日前投票制度は、選挙期日前であっても、選挙期日と同じ方法で投票を行うことができる(つまり、投票用紙を直接投票箱に入れることができる)制度であり、期日前投票は「確定投票」です。他方、不在者投票制度は、投票用紙を投票箱に入れるのではなく、封筒に入れて不在者投票管理者に提出する制度であり、投票の受理、不受理の決定は選挙期日に行うことになっているため、選挙期日まで投票は「確定」しないのです。

 (坂下奈津子/「立法と調査」NO.406・2018年11月)


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