参議院法制局

防衛法制に関する略語

 防衛分野の仕事をしていると、自衛隊内で使われる用語や装備品の名称などみなさんが日常生活では見聞きしないような言葉に接する機会が多いのですが、私が見聞きした防衛法制に関する略語をいくつかクイズ形式で御紹介したいと思います。

 「リクジ」「タイホウ」「サイハ」「カイケイコウドウ」「タイリョウシンソチ」「アクサ」。これらはどのような意味でしょう。

 「リクジ」。これは簡単ですね。「陸上自衛隊」の略語で「陸自」です。

 「タイホウ」。「大砲」と思いきや、「自衛隊法」の略語で「隊法」です。

 「サイハ」。これはみなさんも耳にしたことがあるかもしれません。隊法第83条などで使われている「災害派遣」の略語で「災派」です。災派というと、地震や台風の際に行われるイメージがありますが、海・山での行方不明者の捜索や感染症への対応など幅広く行われています。

 「カイケイコウドウ」。お金の話ではありません。隊法第82条の「海上における警備行動」の略語で「海警行動」です。海警行動は、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合」に発令されます。そもそも海上の人命・財産の保護や治安の維持は警察機関である海上保安庁の任務ですので、「特別の必要がある場合」つまり海上保安庁では対応できない場合に自衛隊が登場するということです。海警行動は、これまで、能登半島沖の不審船や日本の領海内を潜没航行している中国原子力潜水艦などに対応するために発令されたことがあります。

 「タイリョウシンソチ」。親孝行のための措置ではありません。隊法第84条の「領空侵犯に対する措置」の略語で「対領侵措置」です。対領侵措置は、外国の航空機が航空法などに違反して日本の領空に侵入したときに行われます。航空機に対応できる能力が警察機関にはそもそもないため、海警行動と違い、始めから自衛隊の活動とされています。

 「アクサ」。この言葉を聞いた人の99%は保険会社を連想すると思います(私もそうでした)が、アクサとは、物品役務相互提供協定(ACSA・Acquisition and Cross-Servicing Agreement)のことです。これは、自衛隊と外国の軍隊との間で物品や役務を相互に提供する枠組みを定めるものです。隊法第100条の7や重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律などに関係する規定があります。

 さて、みなさんはいくつの略語を御存じでしたか。本稿がみなさんの防衛法制に対する理解の一助になれば幸いです。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。