法制執務コラム

計算内容の規定方法

 参議院比例代表選出議員の選挙においては、いわゆるドント式によって当選人の数を決定しますが、その計算内容について、公職選挙法第95条の3第1項は、「・・・を一から・・・までの各整数で順次除して得たすべての商・・・」というように規定しています。

 法令において何らかの計算内容について規定する場合、特に算式を用いなければ、規定がいたずらに複雑になり、あるいは正確に規定することが難しいときにのみ算式を用いることとされています。したがって、実際においても、算式で表現することは少なく、「加える」「乗ずる」「差」「商」など計算内容を文章で表現することが多いようです。また、算式は、法律よりも、技術的・専門的な事項について規定する政令や省令に、より多く見られます。

 文章で表現された計算内容が単純なものであれば、それほど苦労せずに条文の意味を理解できそうですが、中には、「・・・の合計数に一を乗じて得た数と・・・ごとに・・・の数から二百を減じて得た数を三百六十で除して得た数の合計数とを合計した数」(公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律第12条第1号)というように、加減乗除がすべて文章で表現され、相当落ち着いて読まないと計算内容が分からないものもあります。また、中括弧や大括弧を用いるような計算の場合には、まず各号で小括弧での計算に当たる部分について規定し、各号列記以外の部分(柱書き)で中括弧や大括弧での計算に当たる部分について規定するという形式を採るなど、様々な工夫がなされています。

 条文中で算式を用いる場合には「別窓表示」(地方交付税法第10条第2項)という具合に、語句を用いて算式に表現します。ただ、語句の内容が複雑な場合には「(T-W)×r」(競馬法付録第2号算式)のように、記号を用い、その記号の意味を別途規定する方法も採られています。

 なお、算式は、本来横書きで表記されるものですので、縦書きの条文の中では右に90度回転した形で表記されます。算式の一部を改正する場合も、改正部分が算式の一部に入り込めるよう、右に90度回転した形で表記するので、改正規定の中に突如横向きの語句が現れることになります。

 複雑な計算内容について規定する場合、他の条文の場合と同様に、いかに正確性と分かりやすさとの両方の要請を満たすような表記とするのか、立案職員の腕の見せ所といえそうですが、数学が苦手な私は、他の立案職員以上に頭を痛めることになりそうです。

(下野久欣/「立法と調査」NO.293・2009年6月)


※無断転載を禁ず

戻る


ページの先頭へ