参議院法制局

法律と国語・日本語

A(外国人留学生):日本の法律は、日本語で書かれているようですが、日本語で書くのはなぜですか。

B(Aの日本人の知人):なかなか答えにくい質問だね。まあ、日本国内で普遍的に使用されている言語は、日本語しかないから、日本語が我が国の国語であり、また、公用語であるということになるよね。だとすると、法律の立案について日本語を用いるのは、当然のことであるとしか答えられないな。

A:それでは、国旗や国歌のように、国語を定めた法律はありますか。

B:いや、そのような法律はないよ。日本の国語は日本語であるとか、公用語は日本語であるなどと定める条文はないんだ。ただ、法律上「国語」という用例はあるし、そのような条文は日本語のことを国語といっているのだと理解できるよ。例えば、小学校などで義務教育として行われる普通教育では「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」(学校教育法(昭和22年法律第26号)第21条第5号)が、その教育の目標とされているけれど、この「国語」は日本語のことでしょう。「国語=日本語」という一対一対応の関係は、国内の少数言語の話し手や複数の公用語が使用されている国の人から見れば、自明のこととはいえないのだろうけれど。法律上「日本語」という用語を使うのは、例えば「日本語教育の推進に関する法律」(令和元年法律第48号)のように、外国人が、あるいは外国人も、用いることを想定しているような場合が多いかもしれないね。

A:なるほど。ちょっと調べてみたのですが、「裁判所では、日本語を用いる」(裁判所法(昭和22年法律第59号)第74条)という規定があるから、裁判所では日本語しか使用することができないんですね。

B:そうそう。法廷で外国語で話されても裁判官だって理解できるとは限らないし、傍聴人だって日本語じゃないと分からない場合がほとんどだろうからね。話のついでに、訴訟法の条文では、国語関係の興味深い例があるんだけど知っているかい。

A:知りませんが。

B:通訳人の関与に関する規定なんだけど、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第175条では「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない」と規定しているのに対し、民事訴訟法(平成8年法律第109号)第154条第1項では「口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき(略)は、通訳人を立ち会わせる」となっているんだ。

A:へぇ。国語なのか日本語なのか、それが問題だ・・・。「国語」と「日本語」で実質的に意味に違いはないんでしょうが、この違いに何か理由や由来でもあるんですか。

B:自分で調べてみたらどうかな。調べた結果の報告は、日本語でお願いするね。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。