法制執務コラム

条の枝番号や「第○条 削除」という条は整理されないのか

 平成16年秋、表記の現代語化を目的とした民法の全面改正が行われました。明治29年の制定以来の全面的な見直しになります。

 ところが、改正後の法律には「第三十二条の二」という条の枝番号や「第二百八条 削除」という条が存在します。なぜこれらは整理されなかったのでしょうか。

 もともと、新規制定法には、「第一条」、「第二条」・・・と連続した漢数字の「条名」が付され、きちんと整序されています。

 改正により条数を増減するために、「第○条の二」という条の枝番号を用いて追加する方法や「第○条 削除」という抜け殻の条を残したかたちで既存の条を廃止する方法があることは、過去のこの欄で紹介されています(法律のラウンジ43)。条を移動させると改正が複雑になったり、条名の変更によってその条を引用している他の規定について更に改正が必要になったりします。この手数を避けるため、条の枝番号等を用いる必要があるのです。

 このような方法による改正が行われた結果、改正前の民法は、「第三百九十八条の十の二」など、枝番号どころかいわば孫枝番号というような条も、「第○条 削除」という条もあるという整序されていない状態になっていました。

 たしかに、条の増減を伴う改正のたびに条を移動させ、条名を整序し直すのは、合理的ではないでしょう。

 しかしながら、法律の全面的な見直しの機会には、積極的に条の枝番号等の整理により条名を整序する改正が行われてもよいのではないでしょうか。

 この点、先の民法改正では、「条名にはできる限り変更を加えない」という原則のもと、条名の整序は、孫枝番号の解消等を目的とした必要最小限のものにとどまりました。

 このような方針とされたのは、民法の第九十条(公序良俗)や第七百九条(不法行為による損害賠償)のように、条名自体が、その意味内容の代名詞として定着している条文が多く、条の枝番号等を整理するために条名を整序することは、煩瑣な作業となるばかりか大きな混乱を与えることも懸念されたからです。

 もっとも、さすがに冒頭から「第一条、第一条ノ二、第一条ノ三」と並んでいるのを維持するのはいかがかと思われたのでしょうか、これらの枝番号は整理されました。

 過去にも、表記の現代語化を目的とした平成7年の刑法の全面改正においても、民法と同様に「条名を変更しない」という方針のもと、条の枝番号等はそのままとされ、また、削除された尊属殺人罪の規定も、その後の条が繰り上がることを避けるため「第二百条 削除」として残されました。

 なお、平成16年の文化財保護法の改正は、部分的な改正を行うものでしたが、これにあわせ、全面的に条の枝番号等が整理されました。「第五十六条の二の十二」を「第七十条」とするなど整理された結果、本則の最後の条名は、「第百十二条」から「第二百三条」になりました。関係法律、政令、条例等の整理の煩わしさ以上に、分かりづらさを解消するメリットがあるとの判断から行われたものでしょう。

(岩井美奈/「立法と調査」NO.246・2005年3月)


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