法制執務コラム

調整規定

 ある法律で他法の改正を行う場合、施行日の先後により、改正の対象となる規定の姿が変化することがあります。このような場合に対応する手法の一つに、調整規定というものがあります。

 第159回国会で成立した「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律」(平成16年法律第36号。以下「A法」という。)を見てみましょう。A法は、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」について、題名を「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」にする等の改正を行うものです(傍線〔※編集注〕は筆者。以下同じ)。そして、附則第27条では、国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律(平成16年法律第130号。以下「B法」という。)を一部改正し、B法の附則第32条の次に、次のような調整規定を加えることとしています。

 (調整規定)

 第三十二条の二 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律(平成十六年法律第三十六号)の施行の日が前条の規定の施行の日前となる場合における同条の規定の適用については、同条(見出しを含む。)中「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」とあるのは、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」とする。

 1回読んだだけでは、何のことやら、と思うかもしれませんが、「前条」、つまり、B法附則第32条を見てみると、

 (海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部改正)

 第三十二条 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。(以下略。)

 と、A法による改正前の題名を前提とした規定になっていることがわかります。

 ここでそれぞれの施行期日を見てみると、B法附則第32条は平成17年4月1日から、A法は「千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書」が日本について効力を発生する日から施行されることになっていますが、同議定書の発効のためには、締約国の数など、さらに詳細な要件があり、起案当時にはいずれが先に施行されるか不明でした。

 もしB法附則第32条がA法の施行後に施行されると、A法による改正後の題名「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」と合致しません。このような不都合が生じ得ることをあらかじめ見込んで、このような調整規定を置いているのです。

 「A法の施行の日がB法の施行の日前となる場合」という、言うなれば条件付きの規定であるため、B法がA法よりも早く施行された場合にはこの規定が適用されることはありません。実際にこのような条文を起案するときは神経を使いますが、条件に合致する場合のみ適用される便利な規定ではあります。

 ※編集注 原文では、「海洋汚染」又は「海洋汚染等」にそれぞれ傍線が付されています。

(高橋文佳/「立法と調査」NO.245・2005年1月)


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