法制執務コラム

法令における漢字使用

 7月9日まで法務省で人名用漢字の範囲の拡大案についての意見が募集されていたのは、新聞等でご存じの方もいるかと思います。

 子の名に用いることのできる漢字(人名用漢字)は、常用平易でなければならないとされており(戸籍法第50条)、現在2,235字が認められています。平成15年12月に、最高裁判所が現在の人名用漢字以外の漢字であっても社会通念上明らかに「常用平易」なものであればこれを用いることを認めるという新判断を示したことなどにかんがみ、法務大臣の諮問を受け、法制審議会人名用漢字部会において「人名用漢字の範囲の見直し(拡大)」が取りまとめられました。パブリックコメントの結果も踏まえ、近々、人名用漢字の範囲が拡大される見込みです。

 ところで、法令における漢字の使用については、どのような扱いになっているのでしょうか。

 「法令における漢字使用等について」(昭和56年10月1日付け内閣法制局総発第141号内閣法制次長通知)により、固有名詞の場合及び専門用語又は特殊用語を書き表す場合など特別な漢字使用等を必要とする場合を除き、法令における漢字使用は「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)の本表及び付表によるものとされています。

 常用漢字表で書き表せないものについては、以前は、「賄ろ」〔※編集注1〕のように、単語の一部を仮名書きにするものが多くありましたが、「法令用語改正要領」(昭和29年11月25日付け法制局総発第89号法制局次長通知「法令用語の改正の方針」の別紙)により、常用漢字表にない漢字は、他の一定の漢字に改めたり、他の一定の言葉に言い換えるほか、原則として単語の一部分だけを仮名書きにする方法はできるだけ避け、「わいろ」、「ごうかん」など、仮名書きにしても誤解のおこらない場合には、仮名で書くこととされました。

 しかし、平成7年の刑法改正の際、これらは「賄賂」、「強姦」〔※編集注2〕と、漢字を使用することとされました。背景には、当時の新聞、雑誌等における漢字使用の実情等にうかがわれる一般の意識の変化があったようです。

 また、常用漢字表にない漢字を用いるときは、使用の都度振り仮名を付けるという原則はありますが、その原則も緩和されており、初出のものにしか付けていない例もあります。

 今回、「人名用漢字の範囲の見直し(拡大)」において、「賂」、「姦」が常用平易と認められているように、常用漢字表にない漢字以外の漢字であっても社会通念上常用平易と認識されていると思われる漢字は多く、また、仮名書きにするより、漢字で書いた方が、内容がより伝わりやすい場合もあります。

 法令における漢字の使用については、その時々の社会通念を踏まえ、国民のわかりやすさという観点から決定する必要があるでしょう。

 ※編集注1 原文では、「ろ」に傍点が付されています。 編集注2 原文では、「賂」、「姦」にそれぞれルビが付されています。

(又木奈菜子/「立法と調査」NO.243・2004年9月)


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