法制執務コラム

法律番号が付されていない法律

 前号のこのコラムで、法律には法律番号が付されているというお話がありました。実は、法律であるにもかかわらず、法律番号が付されていないものもあります。例えば、「出入国管理及び難民認定法」は、法律であるにもかかわらず「昭和26年政令第319号」という法令番号が付されているのです。これは、この法律が当初は政令として制定されたからです。

 なぜこの法律が政令として制定されたかについては、次のような事情があるのです。第二次大戦終結の際にわが国はポツダム宣言を受諾して、連合国の占領下に置かれましたが、その際、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件」(昭和20年勅令542号)(以下「ポツダム緊急勅令」という。)という勅令が発せられました。この勅令には、政府がポツダム宣言の受諾に伴い連合国最高司令官のなす要求事項を実施するためにとくに必要がある場合には、命令をもって所要の定めをし、かつ、罰則を定めることができるということが定められていました。つまり、国民に対して罰則で担保された義務を課すことは本来法律をもって定めるべき事項ですが、これを命令で定めることができるということとされていたのです。

 ポツダム緊急勅令に基づいて発せられた命令は、ポツダム命令(勅令、政令、省令等)と呼ばれています。ポツダム緊急勅令自体は、平和条約の最初の効力発生の日〔昭和27年4月28日〕に廃止されましたが、ポツダム命令については、それぞれ、法律によって廃止されたり、法律としての効力を有するものとされたりして、整理がなされました。その結果、現在でも法律としての効力を有するポツダム命令があるのです。

 「出入国管理及び難民認定法」は、このポツダム命令の一つですが、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律」(昭和27年法律第126号)第4条において、「法律としての効力を有するものとする。」とされたのです。また、当初は「出入国管理令」という政令らしい題名でしたが、昭和57年に、難民の地位に関する条約又は難民の地位に関する議定書の締結に伴う改正の際に現在の題名に改められました。

 このほかに、ポツダム命令の中で、現在も法律としての効力を有するものに、「物価統制令」(昭和21年勅令第118号)、「学校施設の確保に関する政令」(昭和24年政令第34号)、「死産の届出に関する規程」(昭和21年厚生省令第42号)などがあります。

 それでは、明治憲法下で制定されたポツダム命令以外の命令であって、法律をもって規定すべき事項を規定していたものは、日本国憲法施行の際にどうなったのでしょうか。そういった命令は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」(昭和22年法律第72号)において、昭和22年12月31日までは暫定的に法律と同一の効力を有するものとされるなどしましたが、その間に法律に改められるなどして現在ではそのような命令は存在しません。これに対し、明治憲法前の法令には、例えば「爆発物取締罰則」(明治17年太政官布告第32号)のように、法律としての効力を有するものがあります。

(加藤敏博/「立法と調査」NO.218・2000年7月)


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