法制執務コラム

公布後施行前の法律の改廃

 法律は、国会で議決されて成立すると、公布され、施行期日から施行されます。このことは、既にこのコーナーで紹介されているところです。

 ところで、ある法律が施行されるまでの間に種々の事情が生じ、その法律をそのまま施行すると不都合が生ずる場合があります。

 最もよくある事例として、ある法律の制定又は改正に伴い関係法律の整備を行う場合に、公布から関係法律の整備を行う法律の施行までにかなり期間があるときに、整備の対象となる関係法律の当該箇所に別の法律により改正が行われるというものがあります。

 このような場合には、関係法律の整備を行う法律のうち整備対象の法律の関係部分を引用している部分に改正を加えることにより対処するのが通例です。

 具体的な例としては、介護保険法施行法が挙げられます。同法は、介護保険法と同日の平成9年12月17日に公布され、一部を除き平成12年4月1日から施行することとなっています。したがって、本誌が発行される頃は、ほとんどの規定が未施行の状態にあります。

 介護保険法施行法は、公布の段階では、第48条で私立学校教職員共済組合法を改正することとしていました。しかし、日本私立学校振興・共済事業団法(平成10年1月1日施行)は、私立学校教職員共済組合法の題名を私立学校教職員共済法に改める等の改正を行うこととしていました。そこで、日本私立学校振興・共済事業団法は、附則64条で、私立学校教職員共済組合法を改正する介護保険法施行法第48条の規定に改正を加え、私立学校教職員共済組合法ではなく、整備後の私立学校教職員共済法を改正する規定になるようにしました。

 介護保険法施行法は、公布から施行までに2年以上あったため、このほかにも、医療保険制度等多くの関連法制度の整備に伴い、その後も未施行の時点で改正されています。

 一方、未施行の時点で内容を全く変更する改正が行われたことがあります。

 このような例として記憶に新しいのは、いわゆる政治改革関連法です。衆議院議員の選挙をいわゆる中選挙区から小選挙区比例代表並立制に改める公職選挙法の一部を改正する法律は、平成6年法律第2号として、同年2月4日に公布されましたが、参議院で否決された後両院協議会で成案がまとまる際に、成立した国会の会期が終了ぎりぎりであることもあり、小選挙区300、比例区200とするなど各種の手直しは、次の国会で行うこととし、施行できない状態でとりあえず成立したものなので、公布された段階では、小選挙区274、比例区226とされるなどの内容とされていました。これについては、平成6年3月11日に公布された公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律により改正され、その新しい内容で公職選挙法は現在のように改正されました。

 また、未施行のまま廃止されてしまうこともあります。この例としては、海上公安局法があります。同法は、施行期日を「別に法律で定める日」としていましたが、施行期日が定まらないまま、防衛庁設置法により、同法の施行の際廃止されました。

 これらの例で分かるように、法律は、成立し、公布されても、施行前に改正されることがあるのです。

(川口啓/「立法と調査」NO.212・1999年7月)


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