法制執務コラム

法律の施行期日

 前号のこのコーナーは法律の公布日施行についての話でしたが、今回は、公布日施行以外の施行について見てみましょう。

 法律の施行については、一般的に国民への周知という観点から一定の期間を置くことが望ましいと考えられています。加えて、その法律の中で政省令への委任がされている場合等には、その準備のためにある程度の期間が必要となります。そのため、公布後一定期間を置いて施行するのがむしろ普通なわけですが、その方法としては、(1)当該法律の附則で確定日として施行期日を定めるものと、(2)他の法令にその定めを委ねるものとがあります。いつからその法律が動き出すかということは、特に国民の権利義務に直接影響のある法律の場合には非常に重要な事項ですから、本来は(1)をとることが望ましいのですが、法律の執行の便宜にも配慮する必要があることから、(2)の方法がとられることも多いようです。ただ、この場合にも、白紙委任ではなく、「この法律は、公布の日から起算して○月(○年)を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」という形で委任されます。

 法律中のある部分について施行期日を異ならせる必要がある場合も多く、その場合には、たとえば、「この法律は、公布の日から施行する。ただし、第○条の規定は、平成11年4月1日から施行する。」という書き方をします。また、特定の人、地域、事項等についてだけ、法律の適用を先送りするという政策がとられる場合には、全体について施行をする一方で、「○○に関しては、平成○年○月○日までの間、この法律の規定(第○条の規定)は、適用しない。」という適用除外の規定を置くことがあります。

 いずれの方法にしても、どの程度の周知・準備期間が必要なのかということについては、明確な基準があるわけではなく、個々の法律の内容に照らして妥当な線を判断することになります。(2)の方法をとっている法律についてざっと見渡してみると、最短1月から始まって、2月、3月、6月、9月、1年、2年、そして最長3年というのもありますが、準備期間という観点からは、審議会の答申を受けて政省令を定めるというような場合にはある程度余裕を見なくてはなりませんが、それでも1年以上ということは考えにくいと思われます。1年以上の場合は、制度の大きな改変、社会経済活動への大きな影響といった点で十分な周知期間を設ける必要があるという場合であるといえるでしょう。それでも、1年、2年までは結構例がありますが、3年となると極めて少なく、最近では142回国会において成立した「特定家庭用機器再商品化法」がある程度です。また、先に述べた適用除外の規定の中では、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」で大型自動車への適用を3年、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」で紙パックやペットボトルヘの適用を5年、除外した例がある程度です。環境やリサイクル関係の規制については、事業者(と所管庁?)の抵抗がそれだけ強いということでしょうか。

 ある法律が別の法律と制度的に一体を成している場合の施行期日の定め方としては、「この法律は、○○法の施行の日から施行する。」というものがあります。整備法等の場合によくとられる方法です。もちろん、確定日施行の方法をとるのであれば、両方とも同じ日とすればよいだけのことです。平成9年に成立した男女雇用機会均等法の改正と労働基準法の改正(女子保護規定の撤廃)の国会審議に際して、両者の施行日が平成11年4月1日となっているが後者のみ先送りせよとの主張に対し、政府はこれらが内容的に表裏一体である旨を主張して譲らなかったのは、記憶に新しいところです。

(村上たか/「立法と調査」NO.208・1998年11月)


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