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懲役・禁錮の拘禁刑への一本化

 令和7年6月1日、「刑法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第67号)による改正のうち、拘禁刑の創設に関する部分が施行されました。これにより、懲役及び禁錮が廃止され、新たに創設された拘禁刑に一本化されました。

 刑の種類が変更されるのは、明治40年に刑法が施行されて以来、初めてのことです。このような改正が行われた背景の一つとしては、近年、刑法犯の検挙人員に占める再犯者の割合の上昇傾向が続いており、罪を犯した者の改善更生・再犯防止を図ることの必要性・重要性がより一層高まっていることが挙げられています。以下では、改正の趣旨・内容について簡単にご紹介します。

 改正前の刑法においては、「懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」(第12条第2項)、「禁錮は、刑事施設に拘置する」(第13条第2項)とされており、懲役と禁錮は、受刑者に作業を行わせる(義務付ける)か否かという点で異なる刑罰とされていました。そのため、懲役受刑者については、刑の本質的要素である作業に一定の時間を割かなければならず、必要な指導等を行うための時間を確保することが困難な場合があるという制約が、禁錮受刑者については、改善更生や円滑な社会復帰に有用な作業であっても本人が希望しない限り実施させることができないという制約があるとされていました(もっとも、「令和6年版犯罪白書」によると、実態上は禁錮受刑者の約8割が自ら申し出て作業に従事しているようです。)。

 そこで、今回の改正では、作業を行わせるか否かが刑の種類という形式的な区分によって定まるものとするのではなく、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とを効果的に組み合わせた処遇を行うことができるようにするため、懲役及び禁錮を廃止し、これらに代えて拘禁刑を創設することとされました。

 改正後の刑法第12条では、「拘禁刑は、刑事施設に拘置する」(第2項)、「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」(第3項)とされています。拘禁刑における作業は、過去の犯罪に対する報い・懲らしめではなく、(指導と同様に)受刑者の「改善更生」、すなわち「罪を犯すに至った要因となっている悪い点を改めるとともに、再び犯罪に及ぶことなく社会生活を送ることができるようになること」(国会審議における政府答弁)を図るためのものと明確に位置付けられている点に、今回の改正の趣旨が現れているのではないでしょうか。

 なお、施行日である令和7年6月1日より前に行われた行為については引き続き懲役・禁錮によって処罰され、施行日前に既に確定している判決については懲役・禁錮のまま執行されることになっています(刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)第441条・第442条)。一定の罪については公訴時効が廃止されていることから、数十年後に「懲役○年」という判決が新たに言い渡されることもあるかもしれません。その意味では、拘禁刑への一本化が完全に実現するまでには、もうしばらく時間がかかりそうです。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2025年12月に編集・執筆し、その後適宜のタイミングで改訂を加えておりますが、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。