参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

法律の「見出し」

 皆さんは「見出し」と聞いたときに、何を思い浮かべますでしょうか?

 新聞の見出し、辞書の見出し、日常生活において使われる場面はいくつかあると思います。ここでは、法律の条文の「見出し」について触れたいと思います。

 法令集を眺めてみると、個々の条文の前に「( )」と付されている文言に気付くと思います。例えば、現在の民法では、第4条に「年齢十八歳をもって、成年とする。」と規定されていますが、その条文の右肩には「(成年)」という文言が書かれています。これが法律における「見出し」です。条文の内容が簡潔に表されており、特に条文が長い場合にはおおよその趣旨を把握するのに役立ちますし、条文の数が多い法律の場合にはお目当ての条文を探すのに便利です。また、初めて見る法律を読む場合には、まず見出しだけでもざっと目を通してみると、その法律の全体像が何となくつかめてきます。

 現在は、法律の条文に見出しが付されるのが一般的ですが、歴史を紐解いていくと、どうやら最初からそうであったわけではないようです。今御紹介した民法も、平成16年改正法による民法現代語化の際に、見出しが付されることとなりました。

 では、我が国で初めて法律に見出しが付されることとなったのはいつ頃だったのでしょうか。帝国議会の会議録まで遡ってみると、第92回帝国議会・貴族院統計法案特別委員会(昭和22年3月5日)において「今期議會に提案致しまする法律案に付きまして...初めて思ひ切つて斯樣な形を取りました...非常に條文が多うございまして、見出しでもあつたらと云ふ氣持を抱きまするやうなものに付きましては、極力斯樣な措置を講じまして、少しでも法律を分り易くしたい」との政府答弁があり、旧統計法など第92回帝国議会に提出されたいくつかの法案において、初めて見出しを付す試みがなされたようです。

 もっとも、当初は見出しの位置が統一されていたわけではなく、例えば、第92回帝国議会で成立した裁判所法では、「第一条( )」というように、条名の直下に見出しが付されています。この方式ですと、いわゆる「共通見出し」(※連続する複数の条文に共通する見出しとして、その複数の条文の冒頭の条文にのみ付す見出しのこと)を付すことが難しくなります。現在は、この方式は採られていません。。

 そのほか、法令集によっては、「〔 〕」や「【 】」などを用いたものを見かけることがありますが、これは、正式には見出しが付されていないため、各出版社において便宜上付されたものです。したがって、同じ条文であっても、出版社によって若干違うことがありますので、条文をそのまま引用して使用する場合や、条文の改正規定を立案する場合には、正式に見出しが付された法律として扱わないよう、注意する必要があります。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2023年12月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。