参議院法制局

ブログと著作権

 皆さんの中にも、ブログを書いている方がいらっしゃると思います。ブログ技術の登場によって、それまで情報の受け手に徹していた一般の個人が簡単に情報の発信者となれるようになりました。と同時に、これまで著作権を意識することが少なかった一般の人たちも著作権に関する問題に関わる機会が増えてきています。

 著作権とは、簡単にいうと、「著作物」を創作した人(著作者)が、著作物を勝手に他人に利用されない権利です。「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)は「著作物」として著作権法の保護の対象となります。例えば、子どもが壁に落書きした絵も、上の条件に該当すれば著作物です。著作物は、勝手に公表したり、複製したり、改変したりすることはできません。

 例えば、気に入っている歌の歌詞の全文を、何の断りもなく、あたかも自作の詩であるかのように自分のブログに載せたとします。「読む人からお金を取るわけじゃないし、このブログのことは数人にしか教えていないから大丈夫だろう」と思うかもしれません。しかし、歌詞の作詞者(著作者)は公衆送信権(同法第23条)を専有しています。オープンな電子ネットワーク上にアップされた瞬間、その歌詞は不特定多数の者がアクセス可能な状態に置かれるので(「送信可能化」された状態。同法第2条第1項第9号の5。)、それによって著作者の権利を侵害してしまうことになります。場合によっては、著作者から多額の賠償金を請求されたり、刑事罰を科せられたりするおそれがあるので注意が必要です。そうならないためには、あらかじめ著作者に、その歌詞を掲載することについて許諾を得ておくか(同法第63条)、既に公表されている著作物であること、カギ括弧などにより引用部分が明確になっていること、その著作物の出典名などの「出所」が明示されていること等の一定の条件を満たして「引用」することが必要です(同法第32条等)。

 一方で、ブログに自作の文章や絵(画像データ)、音楽(音声データ)などを載せる場合は、それが先に述べた条件を満たしていれば「著作物」として著作権法で保護されることになります。なお、著作権が発生するためには登録等の手続は不要で、著作物の創作と同時に権利が発生するとされています。

 以上述べたことは、著作権との関係で注意が必要な例のごく一部で、他にも様々なケースが考えられます。これまで一般に馴染みのなかった著作権の世界ですが、基本的には、「他人の作ったもの、考え出したものは勝手に使わない」というルールを当たり前に守ることが求められているとも言えそうです。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。