参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

国会議員は公務員か

  初対面の人に、私が国会職員であることを話すと、「それって、公務員なの」と聞かれることがあります。国会に勤めている者も公務員であるということは、人によってはぴんと来ないのかもしれません。

 特別職の国家公務員の範囲を規定する国家公務員法第2条第3項では、第14号に「国会職員」が掲げられています。国会職員は、過去の一時期を除き特別職の国家公務員と位置付けられており、法律でも明記されています。

 また、その次の第15号を見ると「国会議員の秘書」が掲げられています。実際には、国から給与が支給されるいわゆる公設秘書が特別職の国家公務員とされ、他方、議員個人の負担で雇用されるいわゆる私設秘書は、国家公務員には当たらないとされています。

 では、国会議員は、どうでしょうか。

 まず、憲法における「公務員」については、各規定の文脈上認められる限り、国会議員も含まれると解されているようです。憲法上は、国会議員も「公務員」であるといっても間違いないでしょう。しかし、常にそのように解釈されるというわけではありません。

 国家公務員法に規定する「国家公務員」については、制定当時(昭和22年)の国家公務員法は、第1条で「この法律で国家公務員には、国会議員を含まない」と明確に規定していました。しかし、昭和23年の改正により、国会議員の位置付けについて、二つの正反対の見解が出てくることとなりました。

 昭和23年の改正では、前出の「この法律で国家公務員には、国会議員を含まない」という規定が削除され、併せて「就任について選挙を必要と(する)...職員」(第2条第3項第9号)が特別職の国家公務員に追加されました。当時の政府委員の答弁では、こうした改正内容を根拠にして、国会議員も国家公務員法上の国家公務員として位置付けられたと説明されています。ところが、同じく昭和23年の改正では、「この法律(筆者注・国家公務員法)は、もつぱら日本国憲法第七十三条にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定めるものである」という規定(第1条第2項)も追加されています。これを受けて、主要な解説書の中には、「日本国憲法第七十三条にいう官吏」に当たらない国会議員は、国家公務員法の枠外にあり、国家公務員法上の「国家公務員」に当たらないという見解を示しているものもあります。どちらに解釈すべきか、なかなか難しいところでしょう。

 このように、同じ用語でも法令によって意味するところが異なったり、用語についての解釈が一筋縄ではいかなかったりします。法律の仕事に携わる上で、こうしたことに悩まされることは、しばしばあるものです。

 ちなみに、国会議員を国家公務員と位置付けたとしても、特別職の国家公務員となるので、国家公務員法は適用されません。したがって、いずれの見解に立っても実務上の問題は生じません。

 ならば、あえて議論する必要はないとも思うのですが、結論を出さないことには、どうも気分がすっきりしない。法律の仕事に携わる者にとっては、自身のこうした性分こそが、実は何より悩ましいのかもしれません。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。