参議院法制局

限時法

 「限時法」とは、一定の有効期間を付した法令のことをいい、「時限法」とか「時限立法」とよばれることもあります。最近の法律では、棚田地域振興法(令和元年法律第42号)や有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法(平成28年法律第33号)等があります。

 限時法のように見えて、実際は似て非なるものもあります。例えば、生産性向上特別措置法(平成30年法律第25号)は、附則第2条で「この法律は、この法律の施行の日から三年以内に廃止するものとする。」と規定していますが、これは施行日から3年後に当然に廃止になるという意味ではなく、それまでにこの法律を廃止する立法をすべきであるという立法者の意思の表明であると考えられています。ですから、施行日から3年以内に何らの立法措置が取られない場合には、この法律はそのまま存続するというわけです。

 したがって、「限時法」を丁寧に定義すれば、法令の有効期間がその法令自体の中で明確に限定されており、その失効時期の到来とともに特別な立法措置を必要とせずにその効力が失われることになるもの、となるでしょう。限時法として制定され、その役割を終えて最近失効した法律の例として、国際観光文化都市の整備のための財政上の措置等に関する法律(附則第2項により平成29年3月31日失効)などがあります。

 限時法が重要な意味を持つのは、「限時法の理論」の場合だと言われます。「限時法の理論」というのは、限時法は有効期間が決まっているので、限時法に罰則がある場合、その罰則も限時法の失効とともに効力を失います。すると、当該法律が失効する間際の行為は、実際上その罰則の有効期間中に処罰することができないため、結果的に罰則が少し早めに失効したのと同じことになってしまい問題だということで、失効前にした行為について、特別の規定がなくとも失効後にも処罰できるとする考えで、判例で認められています。もっとも、これは限時法の中でその旨の規定を置いておけば解決する問題であり、現在の限時法にはそのような規定が置かれていることが多いようです。例えば、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の附則第2条第4項では、「この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、〔...〕なおその効力を有する。」と規定されています。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。