法律の[窓]

公民権停止規定と欠格条項

 リクルート事件など政治家が汚職事件で逮捕され、有罪判決を受けるたびに、立候補制限の在り方が議論されてきました。現行法では、汚職議員の立候補制限は、どのように定められているのでしょうか。

 公職選挙法には、「選挙権及び被選挙権を有しない者」という見出しの規定(第11条)があり、一般に「公民権停止規定」と呼ばれています。この規定には、次の内容の定めがあります。

 衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長という公職にある間に、刑法の収賄罪やあっせん収賄罪などの罪により実刑に処せられた者は、その刑の執行を終わるか、恩赦などによって刑の執行を免除されるかした後五年間選挙権を、十年間(第11条の2)被選挙権を有しない。また、これらの罪により執行猶予付の刑に処せられた者は、その期間中について同じとする。

 この規定は、公職選挙法制定当時にはありませんでしたが、平成4年のいわゆる政治改革関連法の中で、執行猶予期間中は公民権を停止する旨の規定が設けられ、さらに、平成6年の改正により、実刑判決を受けてその刑の執行を終わった場合などにも公民権を停止する部分が追加され、平成11年の改正により、被選挙権を停止する期間を延長する旨の規定が設けられたものです。

 ところで、法律には、ある人が一定の事由に該当する場合に、特定の地位又は職に就くことを認めない旨が規定されることがあります。このような規定のことを「欠格条項」といい、その事由を「欠格事由」といいます。犯罪の前科があることが欠格事由として定められている例をあげると、裁判官、検察官、弁護士、教育職員等の場合は、禁錮以上の刑に処せられた者が、公認会計士、司法書士等の場合は、禁錮以上の刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから三年を経過しないものが、一般職の国家公務員、地方公務員等の場合は、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者が、それぞれ欠格事由に該当します。一般に、このような欠格事由が設けられているのは、その地位又は職が廉潔性が求められるものであるため、前科のある者などその地位や職に不適格な者を排除することによって、その地位又は職に対する信頼を維持しようとするものだといわれてます。

 前にあげた公職選挙法の公民権停止規定は、その事由に該当する場合には、公職に就くことができませんから、その点で欠格条項と同じだということができます。しかし、この規定は、欠格条項と異なる点もあります。一つは、公民権には、公職に就く権利だけではなく、選挙することができる権利も含まれているという点です。もう一つは、公民権停止の事由に該当しない場合でも、選挙で当選しない限り、公職につくことはできないという点です。いいかえれば、公職の地位に不適格な者については、選挙人が選挙の際に判断してその地位に就かせないことができる、ということです。


※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2020年4月に編集・執筆したものですので、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。

戻る


ページの先頭へ