法制執務コラム

「院」が付く国家機関

 我が国の立法機関である国会は、「衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。」(日本国憲法第42 条)と定められています。では、ここでいう議院の「院」とはどのような意味でしょうか。漢和辞典などをいくつか見てみますと、「院」の意味の一つとして、役所などの機関や施設というのが挙げられています。もちろん、寺院、大学院のように国家機関でなくても「院」が付くものもあります。その一方で、「院」は国家機関であることを表す用語としても用いられています。その例をいくつか見てみたいと思います。

 第一に、立法関係では、歴史をひもとくと、明治時代に太政官制下における集議院、左院、元老院を経て大日本帝国憲法下において貴族院及び衆議院が置かれたように、「院」が付く機関がありました。現在の衆議院や参議院にも「院」が付いています。

 第二に、行政関係では、会計検査院や人事院のような例があります。これらは、内閣から独立しているという特殊性があります。その一方で、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のものは、省、委員会及び庁とすると定められています(国家行政組織法第3条第2項)。総務省、公害等調整委員会、消防庁等がこれに当たりますが、こうした国の行政機関に置かれる特別の機関や施設等機関には、「院」が付くものがあります。例えば、日本学士院、日本芸術院、国土地理院、少年院等です。これらの多くは、現在の名称になったのが昭和20~30 年代であり、長きにわたって機関の名称に「院」が付いています(明治12 年設立の東京学士会院を起源とする日本学士院など、元となる機関から「院」が付いているものもあります。)。比較的近年の例としては、平成13 年設立の原子力安全・保安院(平成24 年廃止)、平成14 年設立の国立保健医療科学院(なお、同院の起源は、昭和13年設立の公衆衛生院等です。)があります。

 第三に、司法関係では、大日本帝国憲法下においては、最高裁判所としての大審院や第二審の合議裁判所としての控訴院のように、「院」が付いたものもありました。しかし日本国憲法下では、最高裁判所についてはいうまでもなく、下級裁判所についても全て「○○裁判所」という名称になっています。

 こうして見てみると、国家機関であることを表す「院」の用例は、かなり前から見られ、立法及び行政関係の機関の名称に残っているといえます。

 ところで、省庁に採用されることを「入省」、「入庁」といいます。これに倣うと本院の職員として採用されることは「入院」になりますが、これでは病院に入ることのように受け取られかねないという事情もあってか、事務局又は法制局に採用されるという意味で「入局」というのが一般的です。

 (土井真太/「立法と調査」NO.394・2017年11月)


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