法制執務コラム

もしメダリストになったら―賞金と税金のはなし―

 今年は北京オリンピックが開催されます。日本からも多くの選手が参加します。活躍が期待されるところですね。さて、日本の選手がオリンピックにおいてメダルをとった場合、メダルの色に応じて財団法人日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)からオリンピック特別賞としていわゆる報奨金が支払われているのは広く知られているところですが、それでは、この報奨金には税金(所得税)はかかるのでしょうか?答えは、法律に書かれています。

 一般に、賞金などは所得税法上「一時所得」に分類され(所得税法第34条第1項)、課税対象となりますが、JOCから贈られる報奨金に関しては、租税特別措置法第41条の8第1項において「オリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会から交付される金品で財務大臣が指定するものについては、所得税を課さない。」ことが明記されています。この規定は平成6年に設けられたものですが、これは平成4年に行われたバルセロナオリンピックにおいて金メダルを獲得した当時中学2年生の岩崎恭子選手に対し支払われたJOCの報奨金が、一時所得に当たるとして課税され、注目されたことがきっかけともいわれています。この報奨金への課税問題は、当時、国会審議においても多く取り上げられましたので、覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。

 さらに、文化功労者に対する年金、日本学士院や日本芸術院から贈られる賞として交付される金品等についても所得税は課されないことになっています(所得税法第9条第1項第13号イ・ロ・ハ)。また、「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」についても、同様に所得税は課されません(同号ホ)。この「ノーベル賞」という文言は、昭和43年の川端康成氏のノーベル文学賞受賞をきっかけに、法律上明記することとされたようです。「オリンピック」や「ノーベル賞」等、意外に具体的な規定ぶりとなっているところが面白いですね。

 このほか、税法上規定されているわけではありませんが、多くの方が御存知であろう宝くじの当せん金やサッカーくじのtotoの払戻金について所得税が課されないことも、法律上しっかりと読み取れます(当せん金付証票法第13条、スポーツ振興投票の実施等に関する法律第16条)。

 難解な規定が多いことからついつい敬遠してしまいがちな税法ですが、租税法律主義の観点からも細かいところまで丁寧に法律に書き込まれており、実はかなり読み応えのある法律です。条文を丹念に読んでみると、このほかにも意外な発見があるかもしれません。

(伊庭みのり/「立法と調査」NO.284・2008年8月)


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