法制執務コラム

法律の中での「大人」は何歳?

 我が国の法律では、「大人」かどうかを適用基準とする場面が多くあります。その一つとして、よく目にするのが「成年」でしょう。

 民法第3条は、「満二十年ヲ以テ成年トス」と規定し、成年者に対し独立・完全な財産行為能力を与えています。すなわち、満20歳以後は、私法上、財産取引に関する契約を締結したり、独立して親権を行使することが可能となっています。一方、20歳に達しない「未成年者」には、様々な制限が規定されています。

 「二十歳」の根拠については、民法制定当時、明治9年太政官布告41号において課税や兵役の基準年齢(丁年)を「満二十年」としていたことに従ったと考えられていますが、当時の我が国の慣習では15歳程度を成年としていたため、当時21歳から25歳程度を成年年齢としていた欧米の経済取引秩序とのバランスを取るために「二十年」としたといった考え方もあるようです。

 この民法上の成年年齢には例外があります。いわゆる「婚姻による成年擬制」と呼ばれるもので、未成年者であっても婚姻したときは、「成年に達したものとみなす」とされています。現行法では、男性は18歳、女性は16歳で婚姻できることとなっていますから、この規定に従えば、20歳になる前に民法上「成年」として扱われることになるのです。これは、婚姻生活に独立性を与え、夫婦の平等を貫くための擬制であると説明されています。

 もっとも、この擬制の効果は、私法上の関係にとどまります。

 例えば、未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁止法では、「満二十歳ニ至ラサル者」は飲酒や喫煙は禁止されていますが、婚姻したからといって、これが許されるわけではありません。

 この未成年者に似たものとして、「児童」や「少年」があります。

 例えば、児童福祉法では「満十八歳」、母子及び寡婦福祉法では「二十歳未満」、児童手当法や児童扶養手当法では「十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者」を「児童」としています。児童福祉法は心身が成長期にあることに、母子・寡婦福祉法は子の扶養義務に、児童手当法や児童扶養手当法は学年度に着目して、それぞれ定められています。

 また、労働基準法では、「満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が経過する日」まで児童を使用してはならないとしていますが、これは義務教育年齢と関係しています。

 少年法では、刑事政策的考慮に基づき、「二十歳」を基準として、「成年」と「少年」を区別しています。当然、先に説明した婚姻による擬制は及びません。

 なお、国民の祝日法では、「成人の日」は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする成年を祝いはげます」日とし、特に年齢は定めていません。

 このほか、公職選挙法上の選挙権付与年齢は「二十歳」とされるなど、法律上「大人」として扱われる年齢は、各法律の目的によって、身体の発達や教育課程を基準とするなど、様々に分かれているのです。

 近年、成年年齢を「十八歳」に引き下げる動きが見られるように、時代とともに、法律中の「大人」の年齢も変わりうるものですが、見直しに当たっては、それぞれの法律の目的や趣旨について考えることが必要となります。

(宇田川令子/「立法と調査」NO.235・2003年5月)


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