法制執務コラム

条の枝番号と削除

 第154回国会に内閣から提出された租税特別措置法等の一部を改正する法律案には、目次のうち(第九十条の八・第九十条の九)を(第九十条の八―第九十条の九)に改める旨の改正規定がありました。

 法律の目次において章・節等に属する条文の範囲を示す場合には、2条だけのときは「・」を、3条以上のときは「―」を用いるというのが決まりですから、一見するとおかしな改正だと思われるかもしれませんが、これは、別におかしな改正ではありません。

 その理由は、この一部改正法律案では、二つの条の間に新たに「第九十条の八の二」という条が追加されており、これによって問題となっている節に属する条の数が二つから三つに増え、目次を改正する必要が生じたからです。

 ところで、ここでは「...の二」という条名で新しい条の追加がなされていますが、このような形は、枝番号と呼ばれています。既存の法律に新しい条を挿入する方式としては、条の番号が重なるのを避けるべく、既存の条の繰下げを行った上で条を追加するという方式と、このように枝番号を用いて条を追加し、既存の条の繰下げを避ける方式とがあります。

 枝番号を用いて新しい条を追加した場合、いかにも後で付け加えたという感じがしてあまりスマートとは言えないかもしれません。しかし、既存の条の繰下げを行った場合には、他の法律でその条を引用している条文の整理をする必要も出てきます。この点、枝番号を用いれば、条の繰下げに伴う引用条文の整理を行わなくて済むといったメリットがあります。ただ、このような枝番号は、条や号については活用できるのですが、項については枝番号はありません。したがって、項については、新しい項を挿入する場合は、既存の項の繰下げを行う必要があります。

 ところで、これとは逆に、既存の条を廃止する改正を行うとき、条の繰上げを避けるにはどうすればよいのでしょうか。

 既存の条を廃止する方式には、「第*条を削る。」とする方式と、「第*条を次のように改める。」とした上で「第*条 削除」とする方式との二つの方式があります。前者の方式を採った場合、削り取られた条は、欠番となるわけではなく、ちょうどスポーツで前の順位の人が失格すれば後ろの人の順位が繰り上げられるのと同様に、後ろに続く条について、その繰上げが行われることになります。

 一方、後者の方式を採った場合、第*条はあくまでも「削除」としてその抜け殻が残るわけですから、後ろに続く条の繰上げは、必要ないことになります。

 なお、「第*条 削除」となっている条は、抜け殻かもしれませんが、改正の対象となることがあります。

 冒頭に紹介した租税特別措置法等の一部を改正する法律案には、「第五十六条の三を削る。」という改正規定があるのですが、改正前の同条を確認してみると「第五十六条の三 削除」となっていました。「削除」として抜け殻だけ残してあるものをわざわざ削り取らなくてもよさそうなものなのですが、実は同法律案では、新しく第56条の2という条の追加が予定されており、既存の第56条の2の繰下げ先を確保するため、抜け殻だけしか残っていない既存の第56条の3を削り取るということがなされたようです。

(津田樹見宗/「立法と調査」NO.229・2002年5月)


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