法制執務コラム

国家公務員の肩書雑感

 各省庁に勤める国家公務員の人に名刺をもらうと、「○○省○○局○○課長」とか、「○○省○○局○○課○○係長」などという肩書がある。この肩書は役職を示すものである。政府の国家公務員の身分としては、こういった役職以前に「事務官」、「技官」、「教官」といった官の種類(「官名」といわれる。)がある。細かいことをいえば、他にも色々あるが、基本的にはこの三種である。整理すれば、政府の国家公務員はどこかの省庁に勤務している職員であるが、その役所の職員として事務系の職員であれば「○○事務官」、技術系であれば「○○技官」という身分になる。その上で、役職に応じて○○課長、○○係長などになる。だから、例えば、「○○省の○○課長は技官だ。」とか、「○○係長は事務官だ。」などといわれる。役職のない職員は、「○○事務官」、「○○技官」と名刺に書いていることが多いようだ。

 「事務官」、「技官」というのは各省庁の職員としての基本的な身分といえるものであるが、そんなにきちんと法律で定められているものでもない。どこに規定があるのか、よく探さないと分からないような法律の隅っこで定められている。実は、これが昭和23年の国家行政組織法制定以前の旧国家公務員制度の時代のものであるからである。国家行政組織法の昭和25年改正法附則第2項に「各行政機関の職員の官に関する従来の種類及び所掌事項については、なお、その例による。」と定められている。「その例による」というのは、よく分からない言い方であるが、今までの例にならうということである。そういうことで、各省庁は、それぞれの職員に各省庁の名称を冠して事務官、技官という官名を与えているのである。

 ところで、2001年から中央省庁改革が実施される。そこで、こうした暫定的な旧制度の継続はどうなるのであろうかというと、そのままなのである。きちんと整理したらどうですかといいたいところだが、これには公務員制度が戦前の「官吏制度」から戦後の「国家公務員制度」へと改革される上での問題が引っかかっている。戦後改革の一環としての公務員制度改革の未実施部分なのである。本当は、職階制というものが実施されて、もっとカッコイイ?アメリカ式の分類官職名がつくはずなのである。

 そもそも「官」という名称は、政府と裁判所以外では原則として使われない。戦前は国家公務員を「官吏」といい、明治時代には「官員」ともいった。「官」とは国の政府のことであり、「官」と称することができるのは、国すなわち政府権力に属するものに限られていた。

 ちなみに、現在の国会職員も「官」と称することはない。事務局の職員は「参事」、常任委員会を専門知識で補佐する職員は「専門員」、その下で調査を担当する職員は「調査員」である。国会は、政府・行政機関のように国家権力を行使して国民を統治する機関ではなく、国民の代表により構成される機関であるから官ではなく民の側の機関であり、だから「官」とは称さないのだといわれている。私の名刺の肩書は「参議院法制局参事」である。参事というと地方公共団体や民間企業ではかなり高い地位の職員であるので、エライ人かと誤解されることもあるが、私は部長でも課長でもない役職なしの職員である。

(山本美樹/「立法と調査」NO.221・2001年1月)


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