法制執務コラム

法律の停止・廃止・失効

 平成10年の第144回国会(臨時会)で、「財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律案」が提出され、成立したことは、まだ記憶に新しいところです。右法律案に対しては、参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会において、共産党から修正案が提出されました。それは、財革法の「停止」を内容とする右法律案の全部を修正し、財革法を「廃止」する法律案に変えてしまおうというものでした。

 ところで、法律の停止・廃止とは、どのようなことでしょうか。

 法律の停止とは、ある法律の効力を一定期間停止し、その効力が全然働かない状態にしておくことを言います。

 これに対し、法律の廃止とは、ある法律を新たな立法措置により消滅させてしまうことです。当該法律が適用されなくなる点では停止も廃止も共通していますが、停止の場合には当該法律が依然として存在し続けるのに対し、廃止の場合には当該法律の存在自体が無くなってしまいます。

 ついでに、法律の廃止と似て非なるものとして、法律の失効にも触れておきます。これは、ある法律の効力が、新たな立法措置によることなく自動的に失われることを言います。

 法律の停止の例として有名なのは「陪審法ノ停止ニ関スル法律」です。これは、旧憲法の下で制定された、刑事事件につき事実の有無を判断する小陪審の制度を定める陪審法の施行を停止するもので、この法律によって、我が国の陪審制度は、昭和18年にその施行を停止されて以来、効力が働かない状態のまま現在に至っています。

 停止された法律の効力を復活させるためには、停止に関する法律の中で停止期間の終期が何らかの形で確定的に明示されない限りは、別の立法により措置する必要があります。今回の財革法の停止に関する法律の場合にも、「別に法律で定める日までの間、その施行を停止する」という規定になっていますから、復活させることになれば、改めて立法措置が必要となります。

 法律が廃止された例はたくさんあります。例えば、昨年成立した「真珠養殖事業法を廃止する法律」では、「真珠養殖事業法は、廃止する」という本則の規定が本年1月1日から施行され、真珠養殖事業法は消滅してしまいました。もっとも、附則に「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」という規定が置かれていた関係で、真珠養殖事業法の罰則規定については、いまだに効力を残しています。

 ところで、ある法律の附則に、「この法律は、平成11年3月31日までに廃止するものとする」と規定されている場合、右法律は、平成11年3月31日が来たら自動的に消滅してしまうのでしょうか。答えはNOです。右の規定は、定められた期限までに当該法律を廃止するための措置が講ぜられるべき旨の立法者意思を示したに過ぎないものであり、本当に廃止するには、改めてそのための立法措置が必要となります。

 これに対し、「この法律は、平成11年3月31日限り、その効力を失う」と規定されている場合、右法律は、期限の到来(平成11年4月1日午前零時)と同時に自動的に効力を失う(失効する)ことになります。

(武蔵誠憲/「立法と調査」NO.210・1999年3月)


※無断転載を禁ず

戻る


ページの先頭へ