法制執務コラム

基本法

 近年、法律の題名に「基本法」という名称をもつ法律が多くなっています。もちろん、教育基本法のように戦後すぐに制定された法律もありますが、平成に入ってからも、土地基本法、環境基本法、高齢社会対策基本法、科学技術基本法などが相次いで制定されています。

 では、「基本法」とは一体どのような法律なのでしょうか。

 一般的には、基本法とは、国政に重要なウェイトを占める分野について国の制度、政策、対策に関する基本方針・原則・準則・大綱を明示したものであるといわれています。もちろん、「基本法」という名称が付かない法律にもこうした性格を有するものはありますが、題名に「基本法」という名称をもつ法律は、後述のように、一定の共通する特質を有しており、一般の法律と比べ特徴的な法形式であるということができます。

 基本法の特質として、まず、それが憲法と個別法との間をつなぐものとして、憲法の理念を具体化する役割を果たしているといわれます。たとえば、教育基本法は、その制定の経緯、内容等から、日本国憲法の下での教育の基本について定めたものであり、憲法の補完法的な性格を有するものとされています。

 こうした基本法の出現を背景に、最近では、憲法→法律→命令という段階的な法体系が、あたかも憲法→基本法→法律→命令という法体系に変容していると語られることもあります。

 また、基本法は、国の制度・政策に関する理念、基本方針を示すとともに、それに沿った措置を講ずべきことを定めているのが通常です。そして、これを受けて、基本法の目的、内容等に適合するような形で、さまざまな行政諸施策が遂行されることになります。すなわち、基本法は、それぞれの行政分野において、いわば「親法」として優越的な地位をもち、当該分野の施策の方向付けを行い、他の法律や行政を指導・誘導する役割を果たしているわけです。こうしたことから、基本法で定める内容は抽象的なものにとどまることが多く、訓示規定・プログラム規定でその大半を構成されていることが通常です。

 したがって、一般的に、基本法の規定から直ちに国民の具体的な権利・義務までが導き出されることはなく、それが裁判規範として機能することもほとんどないといってよいでしょう。

 こうした基本法の特質に対して、伝統的な法規概念の立場からは、国民の権利・義務に関する規定がないので法規範とはいえないのではないかという指摘がなされることもあります。しかしながら、社会がますます複雑化、高度化している現代国家においては、一定の行政分野における政策の基本的方向を定め、関係政策の体系化を図ることはますます重要になってきており、むしろ基本法の意義を積極的に位置付けていくことが求められているといえるのではないでしょうか。

 なお、基本法は、国会が、法律の形で、政府に対して、国政に関する一定の施策・方策の基準・大綱を明示して、これに沿った措置を採ることを命ずるという性格・機能を有しており、議員立法になじみやすいともいわれています。現に、近年成立した高齢社会対策基本法や科学技術基本法なども、議員提案でなされており、今後もこうした傾向は続くことが予想されます。

(小野寺理/「立法と調査」NO.209・1999年1月)


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