法制執務コラム

法律における外来語―時代に対応しうる法律をめざして―

 マルチメディア、フィランソロピー、デリバティブ、......日常生活では新しい外来語が次々に登場しますが、法律用語もこのような状況と無関係ではいられません。

 外来語とは、元来は外国語であった言葉が日本語に取り入れられて使用されている言葉を言いますが、その意味・内容が明確で日本語として定着していれば、法文においても使用されます。

 その場合、「たばこ」のように、日本語に取り入れられた時期が古く、ほとんど日本語化しているようなものは平仮名で書かれますが(たばこ事業法2条1号)、なお外国語に由来するという感じが残っているものは片仮名で書かれます。例えば、「レクリエーション」(国家公務員法73条1項3号)、「ポスター」(公職選挙法143条1項1号)、「デザイン」(所得税法204条1項1号)、「バー」(所得税法204条1項6号)などで、現在では多くがこの表記によっています。

 外来語は戦前の法律でも使われていましたが、そのときには、外国語の音を漢字で表記したり、外国語を漢語調に訳した言葉を使用するなどの方法がとられていました。例えば、平成7年の改正前の刑法では、「ガス」は「瓦斯」(118条)と、「ボイラー」は「汽缶」(117条1項)とされていました。改正により「ガス」、「ボイラー」に改められましたが、これによりずっとわかりやすくなったといえるでしょう。

 なお、日本語には、いわゆる和製英語など外国語を組み合わせて日本で独自に作られた言葉がありますが、これらも本来の外来語同様、片仮名書きで用いられています。「老人デイサービスセンター」(老人福祉法5条の3)、「テレビゲーム機」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条1項8号)などがその例です。

 法文における外来語の使用基準は、その言葉が日本語として定着していると言えるか否かという点にあります。また、片仮名で書かれた言葉は、漢字と異なり、見ただけでは意味がわかりにくいので、他に適当な言葉がないかも慎重に検討しなければなりません。しかし、このような判断は簡単ではありません。

 例えば、「総合保養地域整備法」は「リゾート法」とも言われますが、これは立案段階での仮称が通称となったもので、内閣法制局の法案審査で現在の名称に変えられたと言われています。また、「コンピューター」という言葉も法律では使用されていないようです。「電子計算機」(著作権法10条3項3号、刑法234条の2)、「電子情報処理組織」(電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律1条)といった言葉で表現されているのですが、他方では、「プログラム」(著作権法2条1項10号の2)、「ソフトウェア業」(情報処理の促進に関する法律2条3項)といった言葉は法文に登場しています。

 次々に生じる新しい事象に対応するためには、法律も新しい言葉をどんどん取り入れていかなければなりません。わかりやすさと正確さという双方の観点を考慮し、より適切な用語を選択することが求められています。

(植木祐子/「立法と調査」NO.190・1995年11月)


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