参議院法制局 Legislative Bureau House of Councillors

法律における"人"の概念・用語

  六法を開いてみると、年齢や属性などに応じて、"人"に関する様々な概念・用語が用いられていることが分かります。それでは、その基礎となる"人"については、どのように整理されているのでしょうか。今回は、法律上の"人"に関する概念や用語について、いくつか紹介していきたいと思います。

 民法を見てみると、「第一編 総則」に「第二章 人」という章が設けられ、第3条第1項で「私権の享有は、出生に始まる。」と定められています。ここにいう「出生」については、「民法学上は、胎児の全部が母体から出た時点をもって、出生とする立場が通説」(山野目章夫編『新注釈民法(1) 総則(1)』336頁、有斐閣、平成30年)とされています。

 他方、刑法に関しては、生命・身体に対する罪等の保護の対象となる"人"の始期についていくつかの見解が唱えられていますが、判例・通説は「一部露出説(胎児が母体から一部露出した時点で人となる)を採用している」(山口厚『刑法〔第4版〕』207頁、有斐閣、令和7年)と説明されています。

 「自然人」という用語も、会社法などいくつかの法律で使われています。これについては、『有斐閣 法律用語辞典〔第5版〕』(有斐閣、令和2年)によると、「権利義務の主体である個人。法人に対する語。」と説明されています。なお、法人については、先に見た民法の「第一編 総則」に「第三章 法人」という章が設けられているところです。

 表記にも着目してみましょう。まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)のように「ひと」とひらがなで書かれているものもあり、これについては、法案審議における政府答弁において、「まち・ひと・しごとは、中心は人であり、人のための町であり、そして人が暮らしていくため、なりわいである仕事をつくっていくことであろうと。そういう考え方から...平仮名で、かつまた分かりやすく表現させていただいたところでございます。」(第187回国会参議院予算委員会・平成26年10月7日)と説明されています。

 他方、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号)のように「ヒト」と片仮名で表記されているものもあります。この法律では、「ヒト受精胚」などの片仮名の「ヒト」と、「人クローン胚」という漢字の「人」が使い分けられているのが特徴的です。

 今日では、ロボットやAIなどの技術がめざましい発展を遂げています。いつか、ロボットやAIにも人格が認められるような社会が訪れるのでしょうか。そのような社会が訪れるとしたら、法律上、どのように整理され、どのように表現されるのか、"人"との対比という観点から、そのような議論の進展にも注目していきたいと思います。

  • ※ この記事は、参議院法制局の若手・中堅職員の有志が編集・執筆したものです。2026年7月に編集・執筆し、その後適宜のタイミングで改訂を加えておりますが、現在の情報と異なる場合があります。なお、本記事の無断転載を禁じます。